酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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『四十歳になったら死のうと思っている。 現在三十八歳と二ヶ月だから、あと二年足らずだ』
桐野夏生さんとの出逢いとなった、 『顔に降りかかる雨』(初のミロシリーズにしてデビュー作品) から10年、ついにミロシリーズの最新刊『ダーク』 が刊行されるそうです。冒頭はその最新刊『ダーク』より引用。孤独な女ミロは生きる戦いからリタイヤして、旦那ー博夫のような死を選ぶのでしょうか・・・。それはないな、きっと。
村野ミロ。このけったいな名前は、ジェイムズ・クラムリーの‘酔いどれ探偵’ミロドラコヴィッチからつけたそうです。画家にもミロっていらっしゃいますね。あと強い子良い子の飲みものの・・・ハッ、以下自粛(笑)。 桐野夏生さんが生み出したこのミロとの出逢いはもうずいぶん前のこと。どこかで書きましたが、本に呼ばれました。
柴田よしきさんのリコ、乃南アサさんの音道貴子、そして桐野夏生さんのミロが私にとって好きな三大女探偵(刑事)です。読むたびに力がふつふつとわいてくるかのような、したたかでタフで美しい女たちv(八木薔子は探偵ではないので除外〜)
『顔に降りかかる雨』で、村野ミロは友人の失踪事件に巻き込まれていきます。旦那に自殺されてしまった重い過去を抱えた孤独な女ミロが、友人の愛人によろめいたり (古いか)、反発したりしながら真相にたどりつくのですが・・・。 ミロが見た真相はミロをより孤独へ追いやった気がします。この物語を最初に読んだ時に感じた感覚が、まさに《ダーク》な感じ。新刊が、『ダーク』 であると知った時、思わず納得。 村野善三の義理の娘であり、母親が亡き後、父親の愛人であったらしい(このあたりはとても曖昧)ミロ。高校生二年生の時に博夫と出会ったときには、既に義父との関係をゲーム感覚にしていたらしいインモラルな女性。エロス、ボンデージ、同性愛、死体写真愛好者、ミロが垣間見るのは暗黒な闇の世界。妖しく魅惑的。ミロにぴったり。
ミロシリーズの魅力は、ミロ自身が醸し出す淫靡であやういムードにあると思います。まっすぐで正しいものより、ちょっと歪んだものの方が危険で魅力的。新刊『ダーク』 でどんな妖しい世界が繰り広げられることでしょうか。とても楽しみですv
余談ですが、今年の2月に西澤保彦さんとお目にかかった時、桐野夏生さんについてお話させていただく機会がありました。『柔らかな頬』 の終わり方にずっと疑問に感じていたのですが、西澤先生とお話させていただいて解消することができました。 ちなみに桐野夏生さんは、女優さん以上に美しい方であるそうです。
『顔に降りかかる雨』 1993年9月 桐野夏生 講談社
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