酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2002年09月25日(水) 砦なき者

 『破線のマリス』で舞台となった首都テレビ報道局放送センター、道を誤り殺人犯となった遠藤瑶子の部下だった赤松直起が奮闘します。映像を切り貼りし編集することで人を冤罪に追い込み、さらには罪から逃れようとした遠藤瑶子。赤松たちはその遠藤瑶子がやってしまった編集の捏造を放送することによって、殺人犯人を捕まえます。それを見ていたある男が、数年後映像を利用し、大衆を操るカリスマとして登場します。
 この物語、読み返していたのですが、今読むと宮部みゆきさんの『模倣犯』に通じるところがあります。たまに登場するカリスマ性のある人間に大衆は熱狂し、操られてしまう。これはものすごく怖いことですね。‘個’では決してやらないことも‘群’となるとやってしまう。まさに熱に浮かされた結果なのでしょうけど。
 『破線のマリス』で、最後に遠藤瑶子が自分自身で自分の犯罪告発編集を行い、テレビを信じるなと警鐘しました。今回も同じ。ただ流されている映像を闇雲に信用してはいけない。自分の感性を研ぎ澄まし、見分ける目を持たねばならない。
 でも・・・それはとってもむずかしいこと。流されやすいものだからなぁ。

『砦なき者』 2002.1.18. 野沢尚 講談社



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