酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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| 2006年05月17日(水) |
「かっぱタクシー」 明野照葉(『澪つくし』より) |
「かっぱタクシー」 68歳の市橋は個人タクシーをころがしている。市橋の名前は征太郎だが車体に河童の絵を描いていることから河童の河太郎→タロさんと呼ばれるようになっていた。今夜も市橋は一人の老女を乗せ、彼女の一人語りに耳を貸す。彼女の話す昔懐かしい、そして背筋の凍る河童の物語・・・
この短編をハジメテ読んだ時の戦慄を覚えています。明野照葉さんの描く懐かしく恐ろしい世界が好きで、その極めつけでしたから。特にこの主人公が個人タクシーに乗せる女性がトンデモナイ怖さを感じさせるのです。こういうごくごく普通に主婦をやってきた人の心の奥底にこんなにも暗くて深い闇があるとは・・・。その闇を生ませたのは男。なんだか男と女って奴は・・・と何度読んでも途方にくれてしまうのです。この女性の怨念を理解できる、それは私が女だからなのでしょう。それは死ぬまで続く性と言うべきものですね。悲しいことだわ。
だけど本当のところ参っていたのはからだではなく、心のほうだったんです。
『澪つくし』 2006.5.10. 明野照葉 文藝春秋
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