酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
DiaryINDEX|past|will
| 2006年06月14日(水) |
『東京ボイス』 ヒキタクニオ |
バリーモントプロダクションの社長の針谷は三十年前にフラワーチルドレンというバンドで一世風靡した男だった。イケメンの吉本は、バリーモントでCDを出すも泣かず飛ばず。数年後、フリーランスとなった吉本はかろうじて音楽にしがみついていた。なので針谷からもらう仕事は貴重。ボイス・トレーニングをする吉本の元に様々な人間がやってくる。都会の雑踏の中で自分を必死で表現しようとしている人間達の息苦しいほどの喘ぎ、命の叫び。人生模様。
これは予想以上に面白かったです。どうにかして音楽で生きて行きたい吉本自身も軸にした歌う人間達の苦しみや悲しみがスーッと心に馴染むように入り込んできました。音楽というものは人間にとって根源的に必要な要素なんだろうなぁナンテ思いましたね。歌うにしろ奏でるにしろ聞くにしろ・・・なくてはならない音たちだよなぁ。うんうん。吉本の元にボイトレに集まる人たちの歌いたい想いも人それぞれで妙に心に響きました。一番その歌が聞こえてきた気がするのはあるヤクザさんのクリスタルボイスでした。あれは・・・泣けるなぁ。また表紙の唇が歌っているようなのだケレドモなにやらエロチックで、内容にもずいぶんとセックスが生々しく描かれています。男と男のセックスの描写は興味深かった。絶対的に体験できないものだから想像するしかないもの。そういうふうに愛し合うんだなぁって。男と男もせつないわ。
「そんなんじゃないの。みんなに共通しているのは喘ぎってこと。あれがしたい、これがしたい、こうなりたい、こうしたい、っていう欲望ばっかり、そういう喘ぎが現れた声なのよ。喘いで喘いで渇き切った喉から絞り出されるような声ね。吉ちゃんの声は、その代表だったわ。今夜はそれが濃密になったみたいね」
『東京ボイス』 2006.4.10. ヒキタクニオ 講談社
|