酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年08月04日(金) 『ミカエルの騎士6 水晶の檻』 前田栄

 異形の者であるマーティンは自分が変質していくことが加速して行くのを止められずにいた。彼らが生者に執着しすぎると起こる現象らしい。マーティンはアーサーに近づいた元々の理由である水晶の君ロザリアにアーサーを会わせることにした。マーティンからロザリアは心を病んでいてマーティンを天使だと思っていると吹き込まれる。ロザリアと会ったアーサーはなんとも不思議な心持となってしまった。慕わしくも、恐ろしい・・・ロザリアとアーサーは互いが互いをそう思うのだった。なぜならば二人の魂は・・・!?

 さてさて、ついにマーティンの心の想い人ロザリアの登場です。ロザリアの美しい魂とアーサーの美しい魂の類似性にマーティンもメアリも執着します。「歪んだ真珠」では、ロザリアを巡って過去にマーティンとメアリが既に争っていたことがわかります。それがまたまた巡り巡ってアーサーの魂を巡って反発しあう・・・由緒ある因縁だったのですね。「髑髏なす翡翠」では、マーティンの変質の速度の速さをメアリが確認してしまいます。反発しあいながらも同じ美しいものに惹かれては巡り合うマーティンとメアリは悪魔と天使ながら奇妙な絆を感じていて、トムとジェリーのように仲良く喧嘩してるんだなと言う感じです。果てしなく永い時間をかけて(笑)。6巻まで翻弄されるだけの主人公アーサーでありましたが、ロザリアとの出会いによって初めてマーティンに疑問を感じます。それが終末へのプロローグ・・・・。無垢で疑うことを知らないアーサーの心に芽生えた友への疑心暗鬼。マーティンは畏れながらもその瞬間を待ち続けていたように思えるんですよね・・・。

「おまえ・・・・・・いったい何だ?」
 それは、頭の中で考えていた時よりも凶悪な響きを伴っていた。そして、その残酷な響きで狭い空間を充たした。


『ミカエルの騎士6 水晶の檻』 2000.2.10. 前田栄 新書館



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