酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年08月07日(月) 『樹上のゆりかご』 荻原規子

 ヒロミが入学した都立辰川高校は、イベントに力を入れる男子校色が色濃く残る高校だった。男子生徒率が高く、女子生徒は良くも悪くも特別視されてしまい、ヒロミは居心地の悪い思いを抱えていた。しかし、歌が好きなヒロミが楽しみにしていた合唱コンクールあたりから、巻き込まれるようにして生徒会執行部の活動を手伝うこととなる。合唱コンクールで目立った美少女がヒロミに近づき、この学校には「名前のない顔のないもの」が巣食うと言う。そして起こった事件とは・・・!?

 あああっ! この物語は胸に痛くってほろ苦くって懐かしくってトッテモ良かったです〜。めろめろ。高校時代と言う3年間と言うのは、閉鎖的でエネルギッシュでぎとぎとぎらぎらしていて、それでいて初心なココロも残っていて・・・高校生の存在自体が妖怪変化みたいなものだったのだよなぁと思うのであります。清潔さが残るか失われるかの際だった気がしますネェ・・・。高校時代にあまりにも思い入れの深いため、その時代にタイムスリップするかのような眩暈とともに読みました。ありそうで少し怖くて残酷で、ココロに痛くも懐かしい青春小説なのでありました。荻原さんはウマイなぁ。

「男子と同じ土俵で勝ち負けを言うのは、やっぱりまちがっているよね。私は私だってことを、見失うのはみっともない・・・・・・私なりのやり方で、今はここにいるんだし。だから、私が負けたくないのは、女子ってことかもしれないな。私の中の女の子・・・・・・」

『樹上のゆりかご』 2006.6.25. 荻原規子 中央公論社



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