酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年08月08日(火) 『結晶物語』1・2 前田栄

 大妖怪と人間のハーフ凍雨(とうう)は、生きるため金儲けとして質屋を営んでいる。父で大妖怪の白夜は年を重ねた物を舐めて時を食べてしまう。そうすると、品物が新しくなる。そのあたりを利用して商売をしているのだが、金になるアンティークものを凍雨が油断した隙に白夜がぺろりんと舐めてしまい、台無しにしてしまうこともしばしば。凍雨は凍雨で相手の強い感情を結晶にする技を持つ。その味わいは感情によって違うらしい。時や感情を盗む妖怪親子に取られた質草ゆえに僕となっている黄龍は、いつもふたりに振り回されて・・・

 妖怪が質屋を営んでいて、客に幽霊や妖怪がやってきて、巻き込まれる事件は御伽噺の主人公たち・・・そして御伽噺の新解釈が語られると言う、なかなか優れものな不思議物語なのであります。妖怪の感性は人間とは違うために、生真面目な黄龍は四苦八苦。人ならぬ異形のモノたちのココロなんて所詮人には理解できないのでありましょうなぁ。舐めて時を食べてしまう大妖怪・白夜がことのほかお気に入り。とってもキュートなのでありまする。にっこり。

「妖怪がいるって知ってるのに、神や仏は信じないの?」
「神や仏は、妖怪の一派なのか?」
「え? 確かに、妖怪と神との境界ってけっこう曖昧だけど・・・・・・力の強い妖怪が神として祀られていることもあるし、反対に、神だったのに信仰する人がいなくなったせいで妖怪と呼ばれるものになってしまったものもいるし。仏は、人間が悟りを開いてなるものだから関係ないと思うけどね」


『結晶物語』1・2 前田栄 ウィングス文庫



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