酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
DiaryINDEXpastwill


2006年08月17日(木) 『運命の鎖』 北川歩実

 戸叶君保は、自分と同じ遺伝上の父・志方清吾の子供達を捜していた。天才的理論物理学者だった志方は、精子バンクに自分の精子を登録したまま失踪していた。志方の父が、中年期に発病して死に至るアキヤ・ヨーク病という遺伝病に襲われたことを苦にしたものと思われる。遺伝する確率は50%! 志方が発病したか否かで君保たち志方の遺伝子を受け継ぐ子供達の未来も大きく変わってしまうのだ・・・。

 天才の精子を買って人工授精して子供を産む。そこまでして生まれた子供達がトンデモナイ遺伝を受け継いでいたとしたら・・・という、なかなか複雑に考えさせられる物語でした。発病して精神が危うくなって死んでしまう、ケレドモ、それまでは天才的な頭脳を持てるかもしれない・・・そんな状況に直面する子供達やその母親達の葛藤や嘘や打算が人間的にどろどろと絡み合って・・・うわー、ここへこう落ちるのか!?と言う惑わされっぱなしの展開でありました。君保は探偵役と言うより、ワトソン的存在(狂言回しかしら)。ホームズ役の探偵も訳ありな人物で、この人は遺伝を気にする必要はないのに、かなりヘビィな思いをされていて気の毒でした。ここまでして誕生した子供達が遺伝子に翻弄されるって本末転倒な気がしないでもなかったのですケレドモ、この状況に陥ったとしたら・・・こうなるよなぁ、と思うのでありました。

『運命の鎖』 2006.7.28. 北川歩実 東京創元社



酔子へろり |酔陽亭酔客BAR
enpitu