酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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| 2006年08月30日(水) |
『見えない貌』 夏樹静子 |
朔子は、嫁いだ愛娘ハコからの携帯へのメールを楽しみに生きていた。夫は病死し、ハコを育て上げた朔子にとってハコの存在は生きがいだった。そのハコからのメールが途絶え、ハコが消息不明となってしまったことから、朔子の人生の歯車が狂いはじめる。ハコは携帯電話で出会い系にはまり、メル友に会いに行って消えてしまったことが判明する。そして見つかったハコの変わり果てた姿に朔子は・・・
久しぶりに読んだ夏樹静子さんの物語でありましたが、うーん、なんと申しましょうか、お上品で知性あふるる夏樹さんってのが災いとなり、物語がアッサリ流れてしまった感があります。こうもっとドロドロとギトギトとしてたら面白いだろうになぁとトッテモ残念。物語の前半は愛娘が出会い系にはまったことから命を落とした母の怒りと慟哭と復讐の物語で、後半はいきなり法廷ものに変化してしまうという、ちょっと唐突な感じがしました。主人公が物語の半ばで消えてしまうと言うのはどうなのかしら。むー。前半分の物語は非常に興味深いものでありました。正直言って出会い系などというものにはまる感覚が全く理解できなかったのですケレドモ、読んでいるうちに嵌った気持ちがわかった気がしました。寂しさの行方なのですよね・・・。人は寂しいと人恋しいから・・・誰かと何かで繋がりたいんだよね。なんだかしんみりしてしまいました。その娘を失った母親の慟哭と凶気もわからないではなかったです。物語の落ちいく先もナントなしに見えました。親が子を思えばこその物語で悲劇で・・・なんだか哀しかったなぁ。そして現実でも多くの悲劇が毎日毎日起こってて、物語も現実も悲劇でいっぱい。いつからこんなことになってしまったのかなぁ、ナンテなんとも虚しい想いに包まれたことでありました。
『見えない貌』 2006.7.25. 夏樹静子 光文社
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