酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年09月06日(水) 『赤い指』 東野圭吾

 松宮脩平は、恩がある伯父を見舞っていた。容態の良くない伯父を見舞う事をしない息子の加賀恭に不信感を抱く。しかし、伯父は脩平の仕事を気遣い、自分は看護士相手に将棋をしているからだいじょうぶと強がる。父とも慕う伯父の後を追い、刑事になった脩平は新しい事件で恭さんと組むことになる。恭さんもまた刑事で有能だった。ふたりが関わった事件は幼い少女殺人事件だった。事件の背後にある哀しい真実、そして死に行く伯父と恭さんの真実とは・・・!?

 やられました。完敗です。いやはや東野圭吾に敵無しっ! 今回の物語ですごいと思ったのは主要人物のそれぞれの家族模様でした。これが巧妙に織り込まれていて、最後の最後まで柄が見えなかったです。タイトルの意味の奥深さには唸りました。幼い少女を殺した犯人を庇おうとする愚かな親心。でもそれって結局は子供のためと言うよりは自分のためなのではないかなぁと感じました。そして子供の人格を形成する要素に家庭が両親が家族が大きく大きく影響する事は間違いないですね。なんとも痛ましい物語でありましたが、ラストの厳しさ美しさには救われた心持がしました。なんにしても東野圭吾はスゴイ。やはり賞を取るべくして取った作家さんですよね。惚れ惚れ。

どういうふうに死を迎えるかは、どう生きてきたかによって決まる。あの人がそういう死に方をするとしたら、それはすべてあの人の生き様がそうだったから、としかいえない

『赤い指』 2006.7.25. 東野圭吾 講談社



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