酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
DiaryINDEX|past|will
| 2006年09月08日(金) |
『ビア・ボーイ』 吉村喜彦 |
スターライト(ビールやウイスキー会社)に入社して5年、上杉は宣伝部にいた。スターライトは宣伝に莫大な金を注ぎこむ戦略を取っていたため、上杉は好き勝手に仕事をし、そこそこに評価され、若くして天狗になっていた。酒に呑まれて手を出してはいけない女に手をだして、いきなり田舎へ左遷され、営業をやらされることとなってしまう。田舎町で灰汁の強い人間たちに揉まれながら、またまた酒で失敗をしながら、少しずつ営業力を身に付けて行く。腐敗した会社の内部にもメスを入れ、ビール戦争にも勝とうと奮闘する上杉は、いっぱしの営業マンに成長したのだった・・・。
これはもう本当に大穴大当たりで無茶苦茶面白かったです。作者がサントリーの宣伝部にいた方なのでトッテモリ・ア・ルv ライバル会社のライオン(笑)との攻防戦は実際にそうだったのだろうなぁと思わされました。松田聖子さんの歌声でペンギンちゃんが登場したCMらしきことも描かれていて、ああこんなふうにアノCMは生まれたのかって新鮮に驚きました。あと田舎町イコール広島なのですケレドモ、ここの人々がまぁくどくて最高のキャラ揃い。主人公は人に育てられていっぱしの営業マンに成長できたって感じでした。会社の腐敗をも炙りだす爽快さ。一冊にいろんなものが詰まっていて、だからって重くなくって、喉越しさらりと後で苦い物語。秀逸。オススメ。大絶賛!
酒はドラッグや。一種の麻薬なんや。 最初は陽気にやってきて、ちょっとした心の隙にするっと入り込む。それから身も心もどんどん絡め取っていく。 でも酒は悪ない。飲んでる本人が悪いんや。そこに酒があると、つい飲んでしまうのは人間や。 身体の疲れには甘いもの、心の疲れにはアルコールが効く。大人になると、誰しも心が疲れる。たましいが疲れる。アルコールは大切な薬になってくれる。それも確かなことや。 要は加減の問題や。プラスとマイナス。その加減をとるのが、人間は下手くそなんや。
『ビア・ボーイ』 2006.7.20. 吉村喜彦 新潮社
|