酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年09月15日(金) 『エデン』 五條瑛

 新宿のストリートギャング・亞宮柾人は、政治・思想犯専用特別収容所K7号施設に収監される。そこは囚人を生徒と呼び、生徒たちの自主性に重きを置いていて、刑務所と言うより寄宿制の学校みたいだった。さまざまな思想犯たちと関わりあい、成り行きから妙な事件を解決するうちに亞宮柾人は日比谷暴動のカリスマ宇賀神と言う男の存在を知り、興味を覚える。その日比谷暴動で宇賀神に敗北した北と言う男がK7号の所長であり、北は日比谷暴動の真相を知りたがっている・・・? 思想犯でもないストリートギャングの亞宮柾人がK7号に収監された訳とはいったい・・・?

 こういうテイストの物語は苦手な部類なのですケレドモ、『エデン』はトテモ面白かったです。やはり小難しい自分の正義・思想・信念で凝り固まった人間たちの中に毛色の変わったやんちゃボーイが旋風を巻き起こす。妙な事件も要領よく片付けていき、まさにカリスマ宇賀神の再来?と言ったところ。魅力のアル人間と言うものは存在自体がカリスマなのですねぇ。

「思い込むことで、不安に打ち勝っていけるんだ。ところが、お前にはそういうものがぜんぜんない。不安にならないのか?」
「なるか。アホくさ」
 亞宮は吐き捨てた。「生きるための目標だとか意味だとか、そんな温いこと言ってるから、頭がおかしくなるんだよ」


『エデン』 2006.8.10. 五條瑛 文藝春秋



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