酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年09月16日(土) 『銀の砂』 柴田よしき

 珠美は豪徳寺ふじ子が入院している病院へ駆けつける。一世を風靡した女流作家ふじ子は51歳。珠美が秘書をしていた頃と変わらず妊娠しては流産を繰り返しているのだ。ふじ子に焦がれ、妬み、苦しみ、やっと離れた珠美だったのに、またしてもふじ子の妖しい魅力に取り込まれてしまうのか・・・?

 最近、柴田よしきさんの物語を読めていないなぁと渇望していたところへ『銀の砂』が発売され狂喜乱舞しました。どうしたってかなり好きな作家さんの物語と言うものは麻薬みたいな(や、麻薬を体験したわけではないのですケレドモ)もので切れるとダメー。そしてガがガガッと貪るように読んで、内容のあまりのエグさにやられてしまう、と言うジャンキーの正しい姿ですね(苦笑)。ここまで女の汚さを描ききられてはシャッポを脱ぎまくりますよぅ。汚らしくも魅力的な女王ふじ子。その哀しい過去にはなんとも言えず・・・。嫁と姑の確執なんてものは、体験した者には(もしくは現在進行形で体験している者には)殺意すら覚えるんじゃないかしらん。くだらないことなのに無くならない関係ですよね。やだやだ。ふじ子の魔性に絡め囚われ、使い捨てられる人たちの中で珠美だけはスペシャルだったのだなぁ・・・と思いました。珠美がふじ子に惹かれる気持ちは痛いほどわかるし。心にズキズキ痛くてたまらないのに読まずにはいられない、そんな柴田よしきさんならではの圧巻の物語でありました。感服つかまつった。

とても傲慢な考え方でしょうね。・・・・・・読み手は、書き手が何をどう書こうと、発表された作品を自由に読み、どんなふうにも想像をめぐらせる権利はあるわ。でもね、書き手が、本当は何を思っていたのか、それだけは、読み手には永遠にわからない。想像し、分析し、ああだこうだと結論づけることはできても、それが真実なのかどうかは、決してわからない。わかってはいけない。そういうものじゃないのかな・・・・・・だって、もしそれを知ってしまったら、小説の解釈はただひとつに収束してしまう。他の読み方はゆるされなくなってしまう。あなたのしようとしていることは、強盗みたいなものなのよ。小説を離れたところで、生身の書き手をこうして脅して、その真実を知ろうとするなんて、ね

『銀の砂』 2006.8.25. 柴田よしき 光文社



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