酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年09月17日(日) 『ボトルネック』 米澤穂信

 嵯峨野リョウは2年前に死んだ諏訪ノゾミを弔うために事故現場の東尋坊に来ていた。2年経ってやっと現場に訪れる事が出来たリョウだったが、間が悪いことに母から兄の死を知らされる。容赦のない母の言葉によって家に急いで戻らなければならくなったリョウを海風がびょうびょうと吹きつけ、「おいで、嵯峨野くん」と言う声が聞こえた気がした。強い眩暈の後、気がついたリョウが家に戻ると鍵が合わない・・・。そして家の中からいるべきはずのない姉サキが出てきた!? リョウは東尋坊で強風に吹かれ眩暈がした後、違う世界に迷い込んでしまったらしい。その世界では死んだはずの人が生きていて・・・!?

 酷い。酷すぎる・・・ブルブル、と読みきって震えがきてしまいました。でもその酷すぎるブルブルな感想というのは私の感性から言うと最高級にブラボーってことであります。残酷で容赦のない展開とエンディングにやられまくって快感でありました。でも心に痛いのが苦手な方にはオススメできませんね。私のように痛い系ダイスキ人間をしても「痛い〜っ!」と叫びだしてしまいましたもの。リョウの人間性や考え方に問題がおおいにあるにしても・・・母親が酷い。たぶん父親も。リョウの閉塞的な思考回路の痛ましさとサキの解放された脳天気な明るさの対比になにかと思うことが多かったです。そして伏兵と言うべき悪の存在が光りました。こういう悪の塊って存在しそうですものねぇ。

そりゃ、あいつの性根がぐにゃんぐにゃんに歪んでいるから

『ボトルネック』 2006.8.30. 米澤穂信 新潮社



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