酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
DiaryINDEX|past|will
| 2006年09月29日(金) |
『八月の熱い雨 便利屋<ダブルフォロー>奮闘記』 山之内正文 |
皆瀬泉水は一人で〈便利屋ダブルフォロー〉を営んでいる。泉水に舞い込む依頼には何故だか妙な人が関わってくる。依頼の線上に浮かび上がるいくつもの不思議や謎。優しさと人の良さで泉水は依頼をこなしていく。 「吉次のR69」 泉水の元に麻倉亜季という女子大生がやって来た。彼女の祖父の様子がおかしいと言う。67歳の亜季の祖父は粋な男でR69と言うバイクをこよなく愛し、楽しそうに乗りこなしていた。なのにある日バイクを手放した。事故を起こしたわけでもないらしいのにパッタリとバイクを切り離し、鬱欝と引きこもるようになってしまったのだ。いったい祖父に何が起こったのだろう・・・? この物語は便利屋の皆瀬泉水が関わる依頼と謎の連作集なのでありますが、とても気に入ったのが「吉次のR69」でした。これはねぇ、すごい素敵なんですぅー! つくづく物語りに登場する人物の魅力の重要性を感じるものなのでありますよ。めろめろ。あと「約束されたハガキの秘密」もたまらなく好きですね。このスピードの現代で郵便将棋なるもので将棋を楽しむ贅沢感に目から鱗がぼろぼろ落ちましたもの。郵便葉書で将棋を指すの、一手ずつ! これはビックリですよーっ!!! そういう楽しみ方が出来るってなんて素敵なのだろう。結局お気に入りの2編はどちらとも人生を深く楽しむ事が出来る人が登場してるんです。尊敬しちゃいます。なんと言うかのんびりゆったり楽しむって素敵じゃないですか。そういう姿勢に憧れるからこそ心にフィットしたんだろうなぁ。人生を好きなものを深く静かに愛して楽しみたいものなのです。そして知らないことを知ることができる喜びや快感はいいものだなぁとしみじみ感じたのでありました。オススメv あ、ちなみにダブルフォローは泉水と泉水の友人が立ち上げたからダブルなのだそうです。なのにその友人は《いざ便利屋開業というときになって、ある理由から日本一周の旅に出てしまった》そうで(大笑)、泉水とその友人の物語も読んでみたいものだなぁと思っております。なんだかその友人も魅力的だ!
オートバイ乗りは、いくらうじうじ考えてたって、いざオートバイに跨ってしまえば、そんなものは消し飛んでしまうのさ。
『八月の熱い雨 便利屋<ダブルフォロー>奮闘記』 2006.8.31. 山之内正文 東京創元社
|