酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年11月03日(金) |
『バカラ』 服部真澄 |
志貴大希は、美しきキャリアな妻・柘和子からマンション購入を持ち出され、内心でうろたえる。出版社に勤める志貴とバイヤーとして自立する柘和子は夫婦と言えども経済生活は別々。仕入れで海外を飛び回る柘和子は知らないはずだ。志貴には多大な《借》(しゃく)があることを・・・。有能な記者である志貴は違法賭博バカラにはまり、会社の金を流用し借金返済に当てる始末だった。ずぶずぶと泥沼に引きずり込まれそうになりながら、カジノ合法化に巡るきなくさいスクープの臭いを嗅ぎつける志貴。自己破産か、一発逆転か。志貴の人生を賭けた大博打がはじまった・・・!
同じ物語を読んでも読む人間によって視点が違い、感想が違うと言うことがよくあります。先日も友人とあるアニメの主人公が誰かと言う点で視点が大きく違っていたことがあり驚いたものでした。正解は作者だけが知りうることですケレドモ、作者の手を離れ、読み手だけの正解の数があるのかもしれませんね。そんなことを思ったのは、この原作を映像化したドラマを観て、その主人公が全く違う視点で描かれていて、しかも私には面白くなくて吃驚したからでした。あのドラマの主人公に据えた女は、物語の脇役で、それはそれで結構ダーティな女で、だからこそステキだと思っていたのですケレドモ・・・。彼女が主人公となり、主人公のはずの志貴が脇に廻され、しかも魅力がかなりなくなり・・・こうなるともう感性の違いとしか言いようがなかろうともバカヤローといっぱい罵倒してしまいました。原作が好きで映像化がガッカリだと本当に残念。まぁたった2時間弱にこれだけの物語を纏めようとすることに無理があったのでしょうねぇ。それにしても主人公は絶対に志貴であるべきだ!!!
この女のバランスは狂ってる、と思った。だが、なぜか、ちっとも不思議ではなかった。いずれ色褪せていく情報を、まだ足りない、もっと欲しいと懸命に集めている自分と、どこが違うのか。 無意味と思いながらも、癖のように生きた証拠を積み上げていく。虚構の城を築いていく。幸せの目盛りがずれていることには気づいていても、修正のしようがわからない。
『バカラ』 2002.5.15. 服部真澄 文藝春秋
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