酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年11月04日(土) |
『僕たちの戦争』 荻原浩 |
2001年9月12日、その映像に世界中が震えた。世界貿易センタービルに旅客機が突っ込むテロ。テレビはその衝撃の映像一色だった。その翌日、19歳の尾島健太はテレビにもニュースにも興味を示さずにサーフィンに出かけた。夢を持ちながらも現状に甘え、親や恋人のミナミにハッパをかけられてムシャクシャするばかり。そして健太は大波に呑まれ、目が覚めると、1944年だった・・・。健太は飛行術練習生の石庭吾一とうりふたつ。練習中に海に落ち、行方不明となっている吾一と間違えられて1944年を生きることとなる。そして海に落ちた石庭吾一は目覚めると2001年だった・・・!?
これは本当に素晴らしい小説です。戦時下の19歳の若者と現代の19歳の若者が時空を越えて入れ替わってしまう。面白くて皮肉で悲しいのですよ。なんだかすごく考えさせられてしまったわ(ホロリ)。これは山本未來クン主演でドラマ化されたものを観て本を読まなければ!と思わされたのでした。せっかく映像化されたなら最低でもそこまで思わさなければなりませんよね。現代のポジティブ根無し草な健太と戦時下にお国のために必至な吾一、この全く違って見えるふたりを山本未來クンは見事に演じていました。人間というのは周りに左右される生き物なのだと思います。健太も吾一も変わらないものを持っていましたから。そこに涙しましたよ・・・。妙に笑える場面もてんこもりで重苦しいものではありません。文庫化されていますし、ものすごくオススメですv と言うか、読んで心になにかを残して欲しい小説なのです。読んで読んで。
五十年後の日本は、多すぎる物質と欲と音と光と色の世界だった。誰もが自分の姿を見ろ、自分の声を聞けとわめき散らしている。謙虚も羞恥も謙譲も規範も安息もない。 これが、自分たちが命を捨てて守ろうとしている国の五十年後の姿なのか?
『僕たちの戦争』 2006.8.20. 荻原浩 双葉文庫
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