酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年11月14日(火) |
『ヴェサリウスの棺』 麻見和史 |
国立大学東都大学の建物は大正末期から昭和初期に造られたものが多い。医学部本館も古い建物で解剖学教室もここにある。教授の園部のもとで働く千紗都は園部に特別な想いを抱いていた。ある解剖の時、遺体からチューブが摘出された。そのチューブの中には園部を告発する文章が書かれた紙が仕込まれていた。不気味な告発文に恐怖を抱く千紗都は予想もつかない復讐に巻き込まれていく・・・!?
解剖学教室を舞台にした不気味な事件。ヒロインの千紗都は事件に巻き込まれてトンデモナイ状況に落とされるのですが、そのシーンは本当に怖かったです。千紗都が慕う教授の危機を救おうと奔走していただけにあまりにもかわいそうでした。ホラー映画のような展開で面白かったのですケレドモ、途中からトーンダウンしたように感じました。あと少々あれやこれやと詰め込みすぎている感がありました。もう少し削ぎ落としてもよかったのではないかしらん。鮎川哲也賞と言うよりも江戸川乱歩賞ちっくなのではないかと思って読んでいたら巻末で審査員の先生がしっかりと危惧されていました。読み手としては面白ければそれでいいと思っていたのですケレドモ、賞の特色と言うかカラーみたいなものは守られた方がいいように思いました。
周囲と関わり合い、生きていく中で、どうしても無視することのできない出会いがある。そこでどのような選択をしたかによって、人の生き方は変わるのだ。
『ヴェサリウスの棺』 2006.9.29. 麻見和史 東京創元社
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