酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年11月17日(金) 『東京公園』 小路幸也

 圭司は北海道から東京に出てきている大学生。爽やかな佇まいのイケメン・ヒロと一軒家で同居生活中。圭司は家族写真を撮ることをライフワークとしていて公園で撮影することが多い。ある日、素敵なお母さんと娘のショットを捉えたところで声をかけられた。その人は女性のご主人で後日、圭司に妙な依頼をしてきた。「尾行して写真を撮ってほしいんだ」・・・奥さんと娘さんを?

 亡くなった大事な人の夢を見て腑抜けた状態で読んだのですが・・・心にするすると入り込んできてポカポカと温かな陽だまりにいるような思いに包まれました。本当に小路幸也さんの物語は心に優しく染み入るわー。物語に登場する人たちがいい人ばかりで、だから夢のように優しく温かいのかもしれませんね。圭司がファインダー越しに恋をする奥さんと娘さん。あれって奥さんだけに恋したのではなくって奥さんと娘さんの柔らかな愛情そのものに恋したんじゃないかしら。こんなふうにファインダー越しにすら伝わる愛情、そういうもので世界があふれていたならば、きっとこの世は素晴らしいはずなのに、ね。オススメですv

誰かのために生きるためには、その誰かさんが必要なんだろうな。二人ともそういう人を求めていたのかもしれない。それは、単に好きとか恋とか愛なんていう言葉じゃ括られないものだろう

『東京公園』 2006.10.30. 小路幸也 新潮社



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