酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年11月22日(水) 『夏の魔法』 北國浩二

 22歳の老婆ナツキは素性を偽って想い出の島へ人生最期のバカンスにやって来た。病気のために人より早いスピードで老化してしまったナツキ。この島で中学2年の夏にヒロと過ごした。甘く切なく美しい想い出を噛み締めるナツキの前に青年となったヒロが現れた。ヒロもまたこの島での想い出を大切にしていて人生を見つめにアルバイトに来ていたのだった。思いがけない再会に喜び傷つくナツキ。なぜならばヒロの横に若く美しい女性がいたから・・・。

 ああ、こういう痛いほどに切なくて残酷な物語は心に強いものを残しますね。美しかった少女が数年で老婆になってしまった、まだ22歳なのに・・・。この残酷さ。私が少女だった時、22歳だった時、今となってはそれは遠く美しい過去で、年を重ねてきて若さの美しさ眩しさ残酷さを痛感しています。順当に年齢を重ねてきたところでこんなふうに感じると言うのに、22歳で老婆になってしまうなんて残酷すぎました。ただ優しさや救いはナツキの周りにも存在しました。それがまた残酷とも言えるのですケレドモ。美しく繊細なガラス細工がパリンと砕けてしまうような読後感、でも好きです。この切なさ、残酷さ。若さを失いつつある人にこそオススメかもしれないですね。

『夏の魔法』 2006.10.30. 北國浩二 東京創元社



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