| ぼくたちは世界から忘れ去られているんだ |
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| 2002年04月28日(日) | 企画小説第七段 |
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テーマ「己惚れやの話をその人の視点で」 昨日、わたしの世界が崩壊した。 わたしは所謂作家志望、要するに勝ち負けが割とはっきりしている職業なのだ。いや職種でいうと無職なんだけれど。 新人賞、というものが世の中にはたくさんというほどでもないが、ある。それに、わたしは送ったのだ。何人かのこれまた作家志望の友人とともに。関、岩田、ルミ、わたし。わたしは密かに思っていた。こんなかで一番才能があるのはわたしだよね、などと。人間誰しも自分には底知れぬ才能が秘められていると思い込んでいて、大きく冷たい現実とのギャップに苦しんで、悔し紛れに働いたりして生きているのだ。でも、わたしは、違う。この間応募したものでは、わたしは第二次まで受かった。第三次で落ちてしまったのだけれど。それは、結構すごいことなのである。因みに、関とルミはは第一次で、岩田は第二次で落ちた。 ところが、だ。今回の結果が、だ。 わたしは、第一次で落ちた。嘘だろ、と思わず呟いてしまった。しかし、それは嘘ではなかった。ところが、関、岩田、ルミは、全員一次は通った。しかも、今、ルミの書いたものが最終選考に残っている。どうすればいい。このまま、ルミの作品が受かってしまったら。 その予感が、昨日的中し、そしてわたしの、ないしはわたしたちの世界は崩壊した。 「おめでとうございます」で始まる電話が、ルミのところに来たのだ。 ルミははしゃいだ。そして緊張した。 「ねえあたしどうしよう。なんかパーティとかあるっぽいし。怖いから、一緒に来て!」 そう云ったルミの目は今までとは随分と違う、狡猾で計算高い目だった。 次の日、わたしと関は二人で会った。薄汚いくせに照明だけはぎらぎらと光るファミリーレストランで、わたしたちはルミの悪口を言い合った。 「どうせ偶然だよ」 「一発屋になるよ」 「それさえも無理かもよ」 などとわあぎゃあぴゃあだあと、騒いだわたしたちは、いつのまにか満たされた気持ちになり、店を後にし、ストレス発散だ、などとカラオケに行った。アルバイトの給料がまだなので、所持金はかなり少なかったが、三時間半歌いつづけた。関が年甲斐も無くモーニング娘。を歌った。しかしだんだんと、どっちが相手の知らない歌を知っているかの対決になって、わたしはバンドの曲を、関は所謂似非歌姫系の歌を歌いまくった。関はたまに英語の歌を歌った。随分と流暢な発音で、わたしは、なんとなく負けたな、って気分になってしまったのだ。 最近わたしは、なんとなく負けたな、って思いっぱなしなのだ。それも身近な人々に。 ルミの事だってそうだ。どうしてくれる。わたしの世界は徐々に壊れてゆく。 「そんなに自慢ばっかりしてると、友達無くすよ」 中学の時に言われた言葉。 それから、自分自身を抑えて生きてきた。それだというのに。 そんなこと云ってても仕方ないので、わたしはパソコンに向かい、小説を一つ書いた。世界がばらばらに崩れる中で、自分の居場所を捜す女の話だ。 「あたしはいつだって、畏れていた。自分が自分でなくなってしまうことを。けれどそんな事は無く、結局世界が、壊れていく」 なんというか、凄く傑作な気がする。今だったら、どうとだって書ける気がする。 ああああはははは。 よく判らないのだけれど、笑いが止まらない。 わたしは今からルミの受賞パーティへ。 来年のルミの顔がみたい。 わたしはすごいわたしは絶対わたしは負けない。 そう唱えてから、ルミに云う。 「おめでとう」 |
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