冒険記録日誌
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2021年05月14日(金) |
ギリシャ神話アドベンチャーゲーム2 ミノス王の宮廷(P.パーカー他/社会思想社) その12 |
廊下を歩いていると、ばったりとミノス王に出会った。いや、ミノス王が待っていたのかもしれない。彼はお供の人間もつけずに、拙者の前に立ちふさがった。 「わしはお前を観察してしたのだ、アルテウス。アイゲウス王の息子よ、お前は賢い。いつの日にかお前はアテネの王になるだろう。うまくすれば、このクレタの王にもな」 拙者はだまって聞いていた。クレタの王になれるだと?どういうつもりなんだ。たまらずヒントを久しぶりに利用してみる。
―――キョロキョロするな!恥辱点1を負って四二七へ戻れ。
「わけがわからんわ!」 拙者が思わずつぶやくと、ミノス王はそれを自分への返事だと思ったらしく、うなづいて言葉を続けた。 「わしは無からクレタをここまで築き上げた。だが、わしの愛する3人の息子は全て事故で死に、跡継ぎはあの飲いどれの馬鹿息子クレムトンただ一人のみ。奴に王座をつがせれば、この国はめちゃめちゃになるのは間違いがないのだ。わしは王だ。奴が死に、わしの眼鏡にかなった奴が次の王になるべきなのだ」 王の意図はわかったが、拙者はどうにも胡散臭さを捨てきれずにいた。この宮廷にやってきたばかりの拙者を、王にしようと考えるなど、普通ありえるだろうか。 「王よ。自分の息子を殺せと拙者にいいなさるのか。悪いが拙者、そんな侍の風上にもおけぬ振る舞いはできぬ」 「さあ、どうかな。お前はクレタを手中に収める絶好のチャンスを、むざむざ捨てようというのだぞ。まあいい、昼食の席で会おう」 ミノス王は肩をすくめるとさっさと立ち去ってしまった。拙者は立ちつくしたまま、今の出来事を慎重に吟味していた。
しかしその後、事態は思わぬ方向へ向かってしまった。 大広間に入り宮廷の人々と一緒になって、果物と熱い野菜のシチューの昼食を堪能していた拙者だが、あとからやってきたクレムトンがわざとらしく拙者にぶつかって、突き飛ばしたのだ。 「邪魔だ、よそ者め」 あまりの無礼な振る舞いに、パンチで報復すると、クレムトンももんどり打って床に倒れる。奴も怒りの表情で立ち上がると、拙者に飛びかかろうとした。 「そこまでだ!」 ミノス王がいかめしい顔で一喝して、その場を止めた。 「気をしずめて、精力をためておけ。明日の祭りでお前達は拳闘試合をするがよい。豊穣の女神デメテルは、どちらかが命乞いするか死ぬまで、リングで殴り合うことを要求している。それまで2人は離れておれ」 ミノス王は手を振って、昼食会は解散となった。 やっかいなことになったと思う。ミノス王はこの機会をとらえて、公式の場でクレムトンを殴り殺すように、拙者に要求しているのだ。
少し時間をもてあましたので、アリアドネ姫の部屋に向かってみた。 今回の冒険ではまだ彼女とは出会っていない。一度は面会しておいたほうがいいじゃろう。 アリアドネ姫の部屋の扉では、アマゾンの女戦士が一人で門番をしていた。レンブラだ。 彼女にアマゾンの女王からいただいた宝石のブローチを見せると、レンブラは拙者に敬意を示してあっさりと通してくれる。(名誉点1を得る) アリアドネ姫は、物怖じせずに拙者の話し相手をしてくれ、毛糸の玉をくれた。 「これはなんでござるか」 「あの兄(ミノタウロス)のいる迷宮に放り込まれた時に、使うといいわ。毛糸の端を入り口に結び付けて歩いていけば、いつでも毛糸をたどって入り口まで帰ってこられるから」 「なぜ拙者が迷宮に入るのでござるか?」 拙者は少し驚いた。彼女は拙者がミノタウロス退治にきたのを知っているのだろうか。しかし、彼女の答えは違うものだった。 「あら、だって父(ミノス王)は、どのみちあなたを迷宮に放り込んでミノタウロスへの生贄にするつもりだもの。あなたは気づかなかったの?生贄を差し出すのは許してほしいというアテネの願いは、絶対に応じられないのよ。そうすればクレタは滅亡してしまうから」 やはり、食えない奴であったな。ミノス王は。 「でも、あの迷宮を通り抜ける簡単な秘訣があるわ。それは……」 アリアドネ姫が言いかけたとき、レンブラがあわただしく部屋に入ってきて拙者を部屋の外に連れ出した。 「誰かがやってくる。アルテウス!さっさとここからお逃げ」 あの迷宮の地図はすでに大部分は完成しているが、姫の言葉が気になるでござるな。
by 銀斎
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