妄言読書日記
ブログ版
※ネタバレしています
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2002年11月08日(金) |
『刺青・秘密』(小) |
【谷崎潤一郎 新潮社文庫】
解説が引用ばかりで面白くなかったなぁ。 私が引用する部分がないじゃないか。 それに、谷崎への愛を感じない。
読書感想多しといえど、毎度毎度帯・あとがき・解説の感想から入る人もそうそういないんじゃなかろうか・・・。
「刺青」
いやぁ、もう。ねえ? 谷崎の女性の部分部分への描写は、顔かたちを描写するよりも、かえって強い印象を残すと思います。 そして、足フェチ。 どの話にも、女性の足の描写が出てきます。 今まで気にも止めなかった足が特別の物のように思われてきます。
「少年」
私はこの本を、毎日昼休みにちまちまと読み進めていたのですが、この話を読んでいるとき、思わず辺りをはばかってしまいました。 背徳感の一語につきます。 そしていやらしさ。 「刺青」もいやらしさが漂っていましたが、こちらはもっと色彩の濃い雰囲気。 どきどきしました。
「幇間」
遊客の機嫌を取り、酒興を助けることを業とする男、のことだそうで。 一言で言ってしまえば、マゾな男の話なんですけど、そんなことで済ませてしまうと、谷崎のおおかたの小説はそれで済んでしまうと思われ。 この話だけ語り口調が違ったせいか、軽い雰囲気。
「秘密」
もッと色彩の濃い、血だらけな歓楽を求めるように傾いて行った。
ラスト一行。 一体、どのような歓楽へ・・・。
「異端者の悲しみ」
この男になんだか苛々してしまうのは、きっと男の「虚栄家」で「薄志弱行」で「無気力」な部分が全く身に覚えの無いことではないからなのかもしれない。
「二人の稚児」
いちいち描写が美しいです。
「母を恋うる記」
海と白砂と磯馴松。 月の光が照らし出す陰影と、波の音と三味線の音。 息を呑むような美しい光景でした。
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