妄言読書日記
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2002年11月22日(金) 『少女地獄』(小)

【夢野久作 角川文庫】

久作さんはもっと色々読みたいんですが、本屋に無い。

あ、作家に「さん」付けが嫌いな人、「作家さん」という呼び方が嫌いな人もいることでしょう。
そういう人々の主張はきわめて正当だと私も思うには思うのですが、語呂と言うか語感と、読むテンポの良さからつい、「さん」付け、たまに「ちゃん」付け、あげくは愛称までつけちゃったりしてます。
作家に対して馬鹿にしているわけでも、親しみを込めているだけでもなく、便宜的なものであり、どうしてもイヤな人は塗り潰してください。

さて、本題。

「少女地獄」
少女地獄と言う一編の小説だと思っていたので、「何でも無い」から「殺人リレー」そして、「火星の女」にまできて、やっと、あ、違う話なんだ・・・と認識しました。だって、改ページすらしてないんだもの・・・。
まさに、「少女地獄」というべき三つの話。
どれも読み終わると、ほうっと息をつきたくなるような、書簡形式の臨場感といいますか、まるで自分が手紙をもらって、恐ろしい告白を聞くような、あるいは手紙を盗み見しているような、そういう緊張が読んでいる間中ありました。
ああ、怖い。
でも、哀しい。

「童貞」
照りつける太陽の元での、出来事がすべて陽炎のようで、徐々に死へ向かっていく昂作の視点で読み進めると、全てが茫洋としたイメージになってくる。
でも、所々の色彩が妙にくっきりとしていて、印象的。

今日のは読書感想っぽいよ。どうしたのさ。面白味の無い(いや面白くなくていいんじゃないか・・・)

「けむりを吐かぬ煙突」
ミステリー好きとしては、煙を吐かない煙突と言う一つの謎がとても魅力的。
冒頭の女郎蜘蛛が、最後まで読むと、ああそうかという風になる。
これ以降、蜘蛛は出てこないですが、いかにも未亡人を象徴していて、「私」をぞっとさせた理由が推察されるから。

「女坑主」
眉香子がかっこいいなーと。
いいな、こうなりたい(え?)
美青年と妖艶な美女の腹に一物ありそうなやり取りが、とてもよい。
最後の眉香子のセリフ
「どうぞ……貴方みたいな可愛いお人形さんに殺されるなら本望よ。妾はサンザしたい放題のことをして来た虚無主義のブルジョア……略
そうして、ホホホと去る眉香子。

どの話もそうですけど、女性の話し言葉がとても魅力的です。

美少女と言うのがよく出てきますが、それと同じく美少年というか美青年もどうしてか出てきます。
解説の
「美青年と美少女とを区別することは、久作の美学では無意味なことである」
というのが非常に納得せられます。
美少女・美青年好きとしましては、まったくたまりません。
なんで、本屋にないんだよ!



蒼子 |MAILHomePage

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