妄言読書日記
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2002年11月24日(日) 『紫の砂漠』(小)

【松村栄子 ハルキ文庫】

・・・・・・・ん〜?

読了後の感想。

ファンタジーだと思っていたらSFだった、と。
なんだか、そこで神秘性が一気に薄れてしまいツマラナイなぁ。

この世界では、最初人は男女の性別を持たず、「真実の恋」に出会ったとき、二人は「生む性」「守る性」に別れるのですが、が。
ネケトとルジュが恋して、ネケトが女性になったのには、正直驚きました。
例えて言うなら、ジャイアンと出来杉くんが恋に落ちて、ジャイアンが女性になるようなもんです。
さすがの私もそんなものを想像したかないんですが。

しかしこれは読む上での私のイメージでして、本来真実の恋に落ちる前の、幼少の頃の子たちは美しい容姿らしいので、見た目としてはそんなに寒いことにはなっていないんじゃないかと思います。
でも、近所のいじめっ子が唐突に、恋する乙女になったらやっぱり嫌だなー。

内容に関してですが、一人死んだら一人は生かすという具合になにかしら、救いがあってくれれば読後感もよかったのにと思います。
ジェセルと詩人、どちらも死んだのではシェプシェがなんだか報われません。
シェプシが知ったのは、人二人の死に値するほどの真実だったのか。
むしろ知らないほうが、神秘的で美しい砂漠のままだったように思うのです。

というか、最も報われないのは詩人だろう、と。
彼は、いや彼女かもしれないですが、なんのために出てきたの・・・?
私はシェプシは詩人と恋すると思っていたので、恋しないならじゃあなんの役割を持っていたんだ、詩人は、と思わずにいられません。
一人一人のキャラクターの役割が物語を進行するためだけに登場するようで、意味を持たない、物語に深みを与えない、そういう印象です。

シェプシに最後与えられる、ジェセルと言う名前。
運命と言うか、じゃないかと思うのですが・・・
自分のせいで死んだ、二人の名前を名乗るのに、運命などと片付けてもらってはどうにも。

全体的にしっくりこない話でした。



蒼子 |MAILHomePage

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