妄言読書日記
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2010年11月04日(木) 『乱鴉の島』(小)

【有栖川有栖 新潮文庫】

火村&アリスの久しぶりの長編にして、初の孤島。
孤島っていいですよね・・・と無駄に夢を羽ばたかせつつ、二人の休暇はやっぱり殺人事件に見舞われる、と。
二人が休める日は来るのかどうか。もう、日帰り温泉とかスーパー銭湯とかにしといたらいいんじゃないのか、と思いますが。

そんなわけで、お疲れの火村先生が命の洗濯するために、ばっちゃんに勧められてアリスと共に訪れた孤島(しかも行き先を間違った)で起こる殺人事件。
もちろん通信手段は絶たれ、嵐は来ないけど、お迎えが来るのはまだ先という状況で、次々と殺人が・・・起こるかと思いきやそうでもない。
そういう意味では、孤島物にしては事件そのものは大人しめ。
不気味に烏が飛び交ってポーの詩が引用されるけれども、そう派手な話しではなかったです。
しかし有栖川作品は美しいロジックがみどころなので問題ない。
そして私は火村とアリスが仲良しであればいいのにでその点ももちろん問題ない。
火村先生とアリスの仲良しぶりは、有栖川先生のミスリードなのかと疑いたくなるくらい、毎回毎回翻弄されるなぁ。素敵だなぁ。
子どもに懐かれる二人が微笑ましかったです。

一向に作品内容に触れないでここまで来ましたが、島に集まっている人たちの目的が肝。
哀しい絵空事を暴く火村先生はいつもながら辛い立場だなぁ。
この後、ちゃんと休暇取れたのかどうか気になってしまう。

ところで解説で、江神シリーズと火村シリーズのアリスが別人なのは「ワトスン役が名探偵を乗り換えたようで貞操観念に欠けると考えた」という部分に思わず、ぷっと吹き出しました。
貞操観念・・・ぷっ。
それはともかく、有栖川有栖ファンなら、別人であることはもちろん、学生アリスと作家アリスの関係は重々承知してると思うんだけどなぁ。
まさか、この解説者知らないなんてないよね。
そこの設定が有栖川先生のうまいところの一つなのに。



蒼子 |MAILHomePage

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