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沙夜



 ざわざわ

私の胸の中に、不安という名の小石が落ち
波紋が少しずつ広がってゆく。


相手の行動や態度に、昨日とは違う何かを感じとった時。
例えそれが、取るに足りない変化であったとしても
妙に気になってしまうことがある。


もしかしたらその変化が
“愛情の減少の表れ”なんじゃないか?
“良からぬ出来事の序章”なんじゃないか?
などと訝ってしまうからだ。


私は胸のざわざわを鎮めようと、ワインを一気に流し込んだ。
そんなことをしたって、一時的な逃避でしかないのだけれど。


翌朝。
私の携帯には、彼からの2通のメールと2度の着歴が残っていた。


ゆうべは・・・ごめんね。
ワイン飲んで、酔っ払っちゃってたの。



はははははは。


彼のその、少し乾いた笑いの裏には
心配や安堵やいくらかの腹立たしさがあるに違いないと
私の胸はチクンと痛んだ。


あのさ。
今夜、そちらに行くことにしたから。



えっ、明日じゃなくて?
先約の方は?
キャンセルしちゃっていいの?



うん。大丈夫だよ。
だから、今夜もデートしようね。



・・・うん。


胸のざわざわは、この時、一瞬にして消えたのだった。



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2003年03月28日(金)
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