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2013年03月27日(水) 闘わぬ者に勝利の女神は微笑まない。

W杯アジア地区予選で日本はヨルダンに1−2で敗れた。この試合を引き分け以上で終われば、ブラジル行きが決まったのだが、予選突破は持ち越された。

●敗因はただ一つ、ミスを重ねた選手たち

試合内容については省略する。スポーツメディアには批判、激励、そして、相も変わらず、“アウエーの洗礼”の見出しがオンパレード。日本中が“アウエー恐怖症”に陥っている。「海外」がそんなに怖いのか?

敗因は選手にある。ザッケローニ監督にあるわけではない。レーザービーム光線で日本選手を妨害したヨルダンサポーターにでもない。「中東の笛」とよばれる不可解なジャッジをくだす審判でもない。この試合の主審(イラン人)の笛は公正で確かなものだった。Jリーグの笛より基準が明快だったとさえいえる。

選手の惨状を思い浮かべられる範囲で列挙してみよう。

(1)数回の決定機を決められなかったFW前田。
(2)前半ロスタイム、CKのぶつかり合いで、あっさりマークを外されたFW岡崎。岡崎はフィジカルが弱すぎる。
(3)0−1の後半15分、ミスからボールを失い、裏のスペースをつかわれたDF(左SB)酒井高。
(4)酒井高が失ったボールを受けたハイル(ヨルダン)のマークにつきながら、ハイルのスピードについていけなかったDF(CB)吉田。
(5)さらに、ゴール前をカバーしなかったDF(CB)とMF(ボランチ)。
(6)たびたびシュートを打てるポジションとタイミングにありながら、パスを選択し続けたMF清武。
(7)相手の左サイドからの攻撃に脅かされ続けたDF(右SB)内田。
(8)相手が引き気味なのに、空いているスペースに入り込まないMF(ボランチ)長谷部と遠藤。日本が放ったミドルシュートの数は何本あっただろうか。
(9)極めつけは、PKを外した、これまたMF遠藤。

これだけ致命的ミスが重なれば、アウエーもホームも関係なく勝てない。ヨルダンにもミスはあった。日本が香川の得点で1−2に迫った時、ヨルダンはかなり焦っていたし緊張していた。しかも、足が動かなくなってきた。内田が得たPKは日本にとってラッキーだった。PKをとらない審判もいただろう。勝利の女神はおそらく、このとき、日本に微笑んだのだ、どうぞブラジルに行きなさい、と・・・ところが、日本はその機会を失ってしまった。

日本の敗因をもう1つ挙げるならば、残念ながら、本田と長友の不在ということになる。香川には、この二人がもつカリスマ性、精神面の強さを埋め合わせる役割が果たせなかった。年齢もあるだろうし、資質もあるだろう。香川だけではない。ピッチに立った選手たちに闘う意志がない。勝とうとする意欲がない。エリート意識だけが先走り、その陰で代表に選出されなかった選手たちの無念の気持ちを晴らすようなパフォーマンスを見せようともしない。気迫に満ちたヨルダンの選手をかわそう、すかそうとする。おしゃれなプレーを見せようとする。そんなのはサッカーではない。日本では褒められるのかもしれないが、世界では通用しない。本田と長友は、日本選手が陥りがちな消極性を払しょくさせるパワーをもっている。俺がやるんだ、という強さが見られる。

こうしたミスと消極性はどこから来るのか。アウエーだからか。それもあるだろうが、今回の代表選手の精神力の弱さに起因する。アウエーの試合の経験不足からくる。このコラムでたびたび書いていることだけど、日本代表の国際親善試合は概ね、日本ホームで、しかも、できそこないの海外の代表チーム(長旅でコンディションは最悪の状態)との試合ばかりが組まれている。これでは、強化につながらない。

●ザックとジーコ、失敗の繰り返し

この敗戦を機に、ザッケローニのW杯予選突破のための方法論の検証も必要だろう。頑なに自分の気に入った選手を固定して使い続ける手法は、ドイツ大会のときの代表監督であったジーコ(ブラジル)と似ている。両者はどちらも代表監督の経験がなく(ジーコはクラブの監督経験すらなかったのだが)、クラブの監督の方法論を代表に踏襲している。人間関係を含めた、熟成したコンビネーションがチームを強くするという哲学で一貫しているように見える。

ザックが選択した選手たちだけに可能性があるのだろうか。筆者には疑問が残る。たとえば、Jリーグ得点王の佐藤寿人(広島)を使わない理由は何か。DF(CB)はなぜ今野なのか。闘莉王をなぜ入れないのか。ボランチは、なぜいつまでも遠藤、長谷部なのか・・・

アウエーの戦い方のノウハウがない点でも二人は共通している。日本サッカー協会は、ジーコが犯した過ちを、ザックで繰り返してはいないか。

●ひょっとすると「ドーハの悲劇」が再び??

さて、日本は勝点13のまま、6月4日にホームでオーストラリアと戦う。順位表をみると、オーストラリアは勝点6で3位。日本に勝ったヨルダンが勝点7で2位。6月、オーストラリアにしてみれば日本に勝って、勝点3を上げなければ、予選3位で終わってしまう可能性が濃厚となってしまう。日本戦は必死だろう。このままの状態で日本がオーストラリアに負けると団子状態の混戦となり、予選結果は最終試合(アウエーのイラク戦)にまで持ち越されることもある。

イラクは、日本のW杯アメリカ大会行きを阻んだ因縁の相手。W杯アメリカ大会予選における日本とイラクの戦いは「ドーハの悲劇」としてオールドサッカーファンの心に刻み込まれている。もちろん、次も日本が苦手とする、中東におけるアウエー戦である。再び日本中がアウエー恐怖症に陥って騒ぎ出すのか。それも、ぞっとする話である。

日本は引き分けでW杯行きを決められたヨルダン戦を落としたことで、「楽々予選突破」の情況から、一気に「予選敗退の可能性」にまで転がり落ちてしまった。

「入れるべきところで入れないと…」というのは点取りゲームの鉄則。サッカーはその代表ともいえる。日本が勝点1を取れる試合を落とした代償が、予想以上に大きなものとならないことを祈るばかりである。


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