2013年06月02日(日) |
大谷は悪くなっていく |
日ハム期待のルーキー大谷翔平が6月1日、ホーム札幌ドームにおいて、交流戦中日相手に先発登板した。結果は5回3失点で初勝利をあげたが、先回と比較すれば、内容は悪くなっていた。
スピードガン表示では150キロ超がしばしば出ていたが、打者がそれほど速さを感じていないように、TV映像からは見えた。しかも、コントロールの乱れが大いに気になる。コントロールの悪さの主因は、大谷の投球フォームが安定していないためだ。大谷は先天的に理想に近いフォームを身に着けているのだが、下半身の筋力が弱いため、そのかたちを継続できない。コントロールが悪くなると、精神的にいらだって、余計に力んで上体に力を入れる結果、肝心のボールに威力と回転が伝わらない。球数が増え、肩、肘に余計な負担がかかるから、長いイニングが投げられない。
「二刀流」と称して、キャンプで投手としての基礎的トレーニングを怠ってきた弊害が、いまはっきりと出ている。このままローテーション入りしてシーズン終了まで投げ続けさせれば、故障しかねない。今シーズンは故障しないかもしれないが、このような起用法を続ければ、大谷は投手として短命に終わる。投手として稀に見る逸材だけに、誠にもったいない。
投手としてその才能を生かすためには、今シーズンは以降、一軍登板を見合わせることだ。二軍で再度調整キャンプをはって、下半身強化のトレーニングを積み、フォームを安定化させ、さらに右打者の外角いっぱいのストレートのコントロールを磨くことが先決だ。また、併せて、クイック投法の習得とチェンジアップもしくはスプリット系の変化球も習得してほしい。そのことが、アウトを取れる投手の条件となる。
一軍の実戦登板でもできそうだが、大谷の心の整理のための時間の必要性を筆者は強調したい。まず、日ハム首脳陣が大谷に課した「二刀流」という愚策を大谷の肉体と頭(精神)から完全に払しょくさせるための時間。投手としての鍛錬、投手としての調整法、投手としての試合の入り方、相手打者の観察・研究の方法の習得、ピンチのときのメンタルの持ち方・・・投手として学習することはあまりにも多い。二軍行きは、大谷が投手に専念するための肉体的・精神的な時間という意味だ。
先般、MLB・NYヤンキースで活躍している黒田博樹投手を特集したTV番組を見た。その番組で筆者は、黒田がノートにぎっしりと自分の投球(相手打者ごとの)の分析を記録していることを知った。野球は、身体の強さだけではなく、頭の強さも必要なスポーツなのだ。大谷がMLBの頂点までを目指すのならば、まずは日本球界において、「黒田」と同じくらいの、あるいは「黒田」を上回る努力をしなければならない。そういう謙虚さを身に着けなければ、投手としても打者としても失敗する。「二刀流」である限り、その両方を追求することは不可能なのだから。
大谷の「二刀流」が集客を目的とした日ハム球団の経営方針ならば、日ハム球団の集客マーケティングはまちがっている。大谷はパンダではない。大谷が試合に出れば人が集まると考えるのは誤りだ。日ハムがチームとして強ければ、客は球場に足を運ぶはずだ。大谷が試合に出続けたとしても、日ハムのチーム成績が悪ければ、客は遠のく。日ハム経営陣は、チームのためにも大谷のためにも、「二刀流」をやめ、“大投手大谷”を育ててほしい。栗山監督は、大谷に対し、彼がプロの超一流選手となるために何をなすべきなのかを、教えなければいけない。それが指導者としての最低限の役割ではないのか。経営陣の言いなりならば、サラリーマンではないか。
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