2013年10月15日(火) |
NPB、2013シーズンを総括する |
日本プロ野球(NPB)はいま、クライマックスシリーズ(CS)真っ最中だが、ひとまずここで2013シーズン結果を総括しておこう。筆者が開幕前に予想した順位は以下のとおり。
(セリーグ)読売、広島、ヤクルト、中日、阪神、DeNA (パリーグ)ソフトバンク、日本ハム、楽天、オリックス、西武、ロッテ
ところが結果は・・・
[セ・リーグ] 1 巨人:84勝53敗7引分、勝率.613) –得点597失点508 本塁打145盗塁90打率 .262 防御率3.21 2 阪神:73勝67敗4引分、勝率.521)12.5差 −得点531失点488 本塁打82盗塁81打率 .255 防御率3.07 3 広島:69勝72敗3引分、勝率.489)17差 −得点557失点554本塁打110盗塁112打率.248防御率3.46 4 中日:64勝77敗3引分、勝率.454)22差 −得点526失点599本塁打111盗塁57打率.245防御率3.81 5 DeNa:64勝79敗1引分勝率.448)23差 −得点630失点686本塁打132 盗塁54打率.262防御率4.50 6 ヤクルト:57勝83敗4引分、勝率.407)28.5差 −得点577失点682本塁打134盗塁70打率.253防御率4.26
[パ・リーグ] 1 楽天:82勝59敗3引分、勝率.582 −得点628失点537本塁打97盗塁62 打率.267防御率3.51 2 西武:74勝66敗4引分、勝率.529)7.5差 −得点570 失点562本塁打86盗塁113打率.257防御率3.54 3 ロッテ:74勝68敗2引分、勝率.521)8.5差 −得点572失点584本塁打91盗塁91打率.262防御率3.77 4 ソフトバンク:73勝69敗2引分、勝率.514)9.5差 −得点660失点562本塁打125盗塁87打率.274防御率3.56 5 オリックス:66勝73敗5引分、勝率.475)15差 −得点513失点529本塁打93盗塁84打率.256防御率3.31 6 日本ハム:64勝78敗2引分、勝率.451)18.5差 −得点534失点604本塁打105盗塁120打率.256防御率3.74
●ヤクルト最下位は想定外
セリーグは読売の1位は鉄板で外しようがないが、筆者が3位としたヤクルトが最下位。この結果は驚き。ヤクルト最下位の主因は投手陣の故障者続出であったことは疑いようもなく、ピッチングコーチを筆頭にトレーナー等を含めたスタッフの責任は免れない。練習方法、強化方法、選手管理の問題点を整理しなければ、来シーズンもいい結果は出ない。もっとも、ヤクルト指導部が投手を酷使してきたというわけでもないので、投手陣各人の自己管理の問題かもしれない。そのあたりは部外者にはわかりかねる。
●阪神2位の原動力は投手陣の健闘
広島の健闘は予想どおり。CSで2位阪神を2連勝でくだし読売への挑戦権を得ているから、2位の力はある。それでも、CSで広島に敗れたとはいえ、阪神の2位確保は立派。開幕前、筆者は投手陣が悪いと見て5位としたが、終わってみれば、防御率がなんとリーグトップ。メッセンジャー、能見、藤波、スタンリッジが安定していて、防御率争いでは、阪神の3投手――能見(2位)、スタンリッジ(3位)、メッセンジャー(4位)――が、上位を占めた。シーズン終盤に失速し、読売との首位争いから脱落した要因は、リリーフ陣の力不足。MLBに移籍した藤川の穴が埋められなかったことに尽きる。
阪神の前半の健闘を牽引したのが新人の藤波。阪神首脳陣は藤波をうまく起用した。フィジカルの弱さ、インステップの変則モーションからくるスタミナ不足等の問題を抱えながらも新人で24試合に登板、137 2/3イニング(規定投球回数に達せず)、10勝6敗、防御率2.75、奪三振126は立派なもの。日ハムの大谷(二刀流)に比べれば、はるかにチームに貢献したことになる。しかも故障なくシーズンを終了できたことは評価できる。
●藤波は自身の投手像を確立せよ
しかし、藤波がこのままなら、来シーズン以降、順調に成長すると筆者は考えていない。まず、投球フォームである。問題のインステップを修正し、肘を上げてオーソドックス投法にフォーム改造すればいい球が放れる、という保証はない。
というのは、藤波はもともと変則投法が身についていて、それで高校時代まで成功してきた投手。プロ1年目も、新人としては立派な成績を残した。だから、藤波がフォーム改造に取り組むことにもリスクがないわけではない。
彼の投法においては、身体の使い方が「上下」ではなく、「横」回転なのである。だから、当コラムで以前筆者が指摘したように、変則を生かす手もある。MLBで範とするならば、ランディ・ジョンソンだ。ランディと藤波は左右の違いはあるが体型が似ている。身長が高く、リーチ(手足)が長い。ランディも肘が下がった変則でインステップ気味。そのため、ランディの全盛期、相手左打者は怖くて踏み込めず、まずバットで彼のボールをとらえることは至難だった。藤波との違いはフィジカル及びメンタルの強さの面。ランディは荒々しくて、剛腕という形容がふさわしかった。一方の藤波は体はでかいが、お坊ちゃまという風貌で、インステップの割には恐怖感を感じない。
藤波が自身の投手像をどのように描いているかわからないが、自分の特性を生かした投法を自身で構築できるよう、このオフシーズンにしっかり勉強してもらいたいものだ。そのことは、フィジカル面にとどまらず、自身の性格やメンタルも含めたものとなろう。
これも以前書いたことだが、NPBでは、サイドスローながら、最多勝5回(1989年、1990年、1992年、1995年、1996年)、最優秀防御率3回(1989年、1990年、1996年)、最多奪三振1回(1995年)、MVP1回(1990年)、沢村賞3回(1989年、1995年、1996年)を獲得し、プロ通算180勝をあげた斉藤雅樹(読売)も参考になる。
●日ハム最下位は大谷「二刀流」の愚策
パリーグは2012シーズン首位だった日ハムが最下位に沈んだ。このことは何度も書いたので手短にしておくが、その主因は大谷の「二刀流」にある。
一方、筆者が最下位としたロッテが3位となり、しかもCSの1stステージで2位西武を破った。このことは意外な結果だ。戦力の若返りに成功し、選手の成長に応じて勝利を上げていくプロセスはみごと。2013シーズンにおけるロッテの監督・コーチの手腕を評価してしすぎることはない。
●田中の無敗に絶句
楽天の首位は、外国人の補強(とりわけマギー)に成功したこともあるが、いうまでもなく田中投手の驚異的活躍に尽きる。まさに絶句である。先発投手がシーズンを通じて負けなし、とは聞いたことがない。田中投手の好成績を貶めるつもりはないが、他の5球団にはなんとかしてもらいたかった。
楽天及び読売がCSを勝ち上がったという仮定のもとだが、田中投手と読売打線の対戦に興味がある。田中が打たれれば、読売の楽勝。たとえ、読売が田中は打てなくとも、読売が日本シリーズに勝ちこす確率は高い。野球というスポーツは総合的な戦力の勝負。一人の英雄の力だけでは、いい結果は出せないものだ。
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