2013年11月08日(金) |
日本シリーズ(NPB)から見えてきたもの |
◎則本・田中、各2勝で優勝(4勝)?
日本シリーズ、楽天−読売は、楽天が4勝3敗で優勝した。戦力的に見て圧倒的に優位にあるはずの読売が負けたのは意外だった。とりわけ、マシソン、山口、西村に沢村を加えた読売のリリーフ陣は盤石に近く、短期シリーズでは優位だと思われた。
楽天は先発投手としては絶対エースの田中と新人の則本以外は頼りにできず、しかも、リリーフ陣の読売に対する劣位はだれが見ても明らか。おそらく星野楽天監督は、1・2戦(ホーム仙台)を田中、則本でとり、よしんば、3・4・5戦をアウエーの東京ドームで落としたとしても、仙台で田中、則本でとれば4勝(優勝)できると読んだのではないか。ところが、意外にも、初戦の楽天の先発は則本で、しかも、負けてしまった。これで、読売がシリーズを楽勝で制すると思われた。2戦目は予想どおり楽天が田中でとった。
◎杉内は楽天に通用しない?
さて、移動日を挟んだ3戦目の東京ドーム、楽天が美馬で勝った。この試合がシリーズの最大のポイント。3戦目を楽天がとったことは、このシリーズが当初の予想とはまったく異なる展開を示すことを示唆していた。3戦目の読売の先発は杉内で、杉内は2回途中6安打4失点でKO。杉内は楽天に通用しなかった。3戦目の先発とは、つまり、第7戦の先発である。7戦までシリーズが長引けば、読売は杉内で試合を落とす可能性が高くなった。
次なるハプニングは第5試合。楽天の先発は辛島、読売は内海で、実績、経験からみて、読売の楽勝かと思われたが、その辛島を読売打線が打てずにロースコアの接戦にもちこまれ、延長10回、読売のクローザー西村が打たれて2−4で読売が負けてしまった。5試合で楽天が3勝2敗、しかも、アウエーの東京で2勝1敗の勝ち越しである。田中・則本で4勝を目論んだ楽天が、田中、美馬、辛島(リリーフに則本)で3勝を挙げて仙台に帰れたわけだから、勝負というのは分からないもの。
仙台の6戦は、楽天が田中で負け(読売が菅野で勝ち)、7戦は楽天が美馬で勝って(読売が杉内で負け)楽天の優勝が決まった。つまり、星野楽天監督の目論みは外れたが、美馬が2勝(防御率0.0)を挙げて、楽天を優勝に導いた。
◎阿部の絶不調は力の衰え?
戦力的に圧倒しているはずの読売がシリーズを落とした理由は簡単で、読売の打線が低調だったこと(チーム打率.182、楽天が同.267)。とりわけ阿部が1割を切る低打率で終わったことに尽きる。もうひとつは、前出のとおり、3戦、7戦の先発である杉内が楽天に通用しなかったこと。第6戦で読売は楽天の絶対エース田中を打ち崩しただけに、杉内の不調が読売には惜しまれる。
◎2014シーズン、読売は苦戦する?
このシリーズから2014シーズンの行方を占うならば、読売はベテラン勢がいよいよ本格的な下り坂に突入したことが明らかで、来シーズンは苦戦する。投では、シーズン中から陰りを見せていた杉内、ホールトン、内海の力の低下が顕著に。つまり、頼れる先発は菅野ただ一人という心細さである。若手の小山、沢村、笠原、宮国(右腕)、今村、阿南、高木京(左腕)らが一軍で安定した力を発揮できなければ、読売の先発投手陣は崩壊である。
打では、阿部の不調がシリーズ限定の一過性なのかどうか。ロペス、村田、長野、坂本に力の衰えは見えないものの、内野手では藤村、脇谷、中井、外野手では松本、橋本が非力で、しかも伸び悩み、高橋由、亀井、ボウカー(退団?)のベテラン勢が、もはや、現役続行不可能寸前の状態。代打陣では、2012シーズンに大ブレークした左の石井が衰えをみせ、右の矢野しかいない状態(谷は退団?)。
読売の戦力は2013シーズンが頂点。来シーズン、リリーフの山口、マシソン、西村はいまの力を維持できるかもしれないが、山口、西村にはここ2シーズンの過剰登板の翳りが見えないとは言えない。西村がつぶれた場合は、マシソンをクローザーにして、沢村、山口の3枚となることもあり得る。そうなると、ますます、先発陣が不足するので、若手の台頭もしくは外国人で補充をしなければ立ち行かない。
◎読売はヒール役?
日本シリーズに話を戻すと、このシリーズは、大震災の復興のシンボルを背負った楽天が主役で、読売がいわばヒール役である。かつて日本中が「巨人ファン」だった時代は終わりを告げたのだ。とりわけ、仙台ではMLB同様、球場全体が楽天ファンで埋まり、読売は完全アウエーの状態だった。
「巨人」一極集中のプロ野球体制はすでに崩壊している。地域に密着した地元チームが地元の応援を得て、興行収入を上げていく図式が見えてきている。既得権で頃固まった12球団体制を一掃し、地元密着の球団を育ててチーム数を増やし、親会社の広告収入に依存しない健全な球団運営の下で、プロ野球(NPB)の新体制を構築してほしい。
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