2013年11月15日(金) |
資金力で戦力独占を謀る読売のFA戦略は異常 |
オフシーズン、来季に向けてNPB各球団は戦力増強に必死。ドラフト会議が終了したこの時期はなんといっても、FA宣言をした選手に注目が集まる。NPBはMLBと違って、大型のトレードは実現しにくいからだ。
そんななか、金満・読売が、戦略なき戦力補強に邁進している。今シーズン前、筆者が順位予想をしたときに書いたけれど、読売の戦力は12球団で群を抜いたもの。
この戦力で日本一を取れなかったのは、読売打線、とりわけ、主砲の阿部(34)が極度の不振にあえいだこと。投手陣は、杉内以外はふんばったし、長野(29)、ロペス(30)、寺内(30)、高橋(38)、村田(33)らは調子が悪いなりに好機で打った。とはいえ、4番の不振を補うほどのできではなかった。主砲が打率1割に満たないのだから、勝てるわけがない。加えて、楽天が被災地復興のシンボルとなり、読売は戦う前から日本シリーズの主役の座から降ろされていた。読売が「ヒール」にまわる日本シリーズというのは、筆者の記憶にない。
そんな読売である。これ以上のFA選手獲得という、高年齢選手よる補強は意味がないと思う方が自然だろう。とりわけ、今年のFAの目玉といわれる、広島からFAの大竹寛投手(30)、中日からの中田賢一投手(31)、西武からの片岡治大内野手(30)の3選手の力量ならば、敢えて戦力がだぶついている読売が獲得を目指す必要はない。
とはいえ、読売の戦力に翳りが見えてきたことも事実。以前当コラムに欠いた通り、著しく力が落ちているのが、投手では杉内(33)、ホールトン(34)、内海(31)、野手では阿部(34)を筆頭に、超ベテランの域に入った高橋(38)、今年好調だった村田(33)、亀井(31)、ロペス(30)もオーバー30Sだから、来季以降はどうだろうか。
だが、結論を先に言えば、読売に必要なのは若手の台頭である。FA(=オーバー30Sの選手)で一過性の補強をしても、チーム力は長続きしない。早ければ1シーズンの経過で、力の衰えを見せてしまう。そして、チームは一挙にガタがくる。
そればかりではない。FAによる上からの補強は、チームの世代交代を阻害する。30代の選手は数年でピークアウトを迎えるが、フィジカルの強い若手が順調に伸びればチームに活気が生まれる。レギュラーを獲得した若手選手が他の若手選手に刺激を与え、競争が激化し、シネジー効果が期待できる。強さが長持ちする。
読売が楽天に負けた原因として、楽天にあって読売になかったのが、フィジカル面で優れた若手選手=田中投手(25)、則本投手(23)、美馬投手(27)、辛島投手(23)、岡島野手(24)、銀次野手(25)らの存在だろう。楽天は彼ら若手の牽引力で、「絶対エース田中」が負けても、読売を圧倒することができた。逆に言えば、読売には、牽引すべき若手は坂本(25)しかいないし、その坂本も本調子ではなかった。圧倒的に分厚い戦力をもつ読売だが、短期7試合の日本シリーズでは、戦力よりも、勢い、調子によって勝敗が決することがある。
そんなことは読売の首脳陣でもわかっているはず。それでもカネに糸目を付けず読売がFA選手を漁りまくるのは、他球団の戦力補強を邪魔するため。つまり読売の場合、FA宣言をした選手を放置して他球団にもっていかれるよりは、とりあえず読売に入団させておいて、悪ければ塩漬けにしてもいい、という考え方なのだ。
読売は既存戦力の台頭に期待するものの、「巨人」に入団したがっているFA選手を豊富な資金にものを言わせて獲得しておいて、他球団には渡さないことで保険とする。獲得した選手が活躍すれば補強は成功したことになるし、活躍しなければベンチでも二軍にでも置いておけばいい、という考え方なのだ。自軍のベンチや二軍にいれば、絶対に自軍に脅威にはならない。
そんな犠牲者としては今シーズンならば、谷、小笠原が代表だろう。「元巨人」という肩書は引退後の生活に有利な看板という面もあり、ベテラン選手にとっては、読売に入団してしまったら他球団に移りにくい事情もある。
プロフェッショナル野球なのだから、球団の資金力を抑制することは難しい。カネがあるヤツは、野球界に限らずどんな世界でも強い。だが「巨人」人気で読売が突出しすぎているNPBは異常な世界。FA宣言した選手は読売に入団してほしくないが、もちろん、止めることはできない。なすすべがない。筆者にできることは、「巨人」(=読売)を嫌う以外にない。
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