2013年11月17日(日) |
イロジカルな試合(オランダ−日本) |
<国際親善試合:日本2−2オランダ>◇16日◇ベルギー・ゲンク
サッカー日本代表がベルギーでオランダと引き分けた。この試合の開催地はオランダに近いとはいえ、ベルギーである。両国ともホームではない。サポーターの数は日本人のほうが多かったという。もちろん移動距離は日本の方が長く時間がかかっているが、両代表の選手にとって、戦うモチベーションが保ちにくいことにかわりなかろう。
◎イロジカルな試合
この試合を一言で表現するならば、イロジカル(illogical/非論理的)というほかない。前半10分くらいまでは日本がプレスをかけて主導権を握った。ところが、日本の動きに慣れたオランダが圧力をかけ日本が引き気味になり、13分にDF内田のミスをついたMFファンデルファールトが楽々と得点する。そして、39分にまさにワールドクラスの一瞬のサイドチェンジからFWロッベンがこらまたワールドクラスのミドル・シュートでオランダが加点。ここまでは、ブラジルW杯優勝候補といわれるオランダの一方的展開だった。つまり、戦前、多くの人が思い描いた日本の負けパターンだった。
しかし、その5分後、MF長谷部の持ち上がりから、FW大迫のワンタッチシュートが決まり、日本に希望が出た。そしてその流れの影響なのかどうかは不明だが、後半開始直後から、オランダ守備陣が混乱をしはじめ、しかも足が止まりだした。後半開始から、MFデヨングがアウトとなり、MFビレムスが交代ではいってきたからかもしれない。いずれにしても、日本のチャンスである。しかも、徐々にだが、後半から交代で入ったFW香川、FW柿谷、MF遠藤と、日本の中心選手・MF本田のコンビネーションが良くなり、後半15分にMF本田の同点弾が決まった。これもワンタッチシュートで、悪くないかたちだ。
同点後は日本が圧倒的に優位に試合を支配し、得点チャンスをつくったが、決めきれずにドロー。記録上、日本はFIFAランキング8位のオランダとの親善試合をベルギーで行い、引き分けたことになる。
結果からみればそのとおりなのだが、なんとも不思議な試合展開というほかない。冒頭に書いた通り、不思議というよりも非論理的である。後半、オランダはなぜ、守備を放棄したのか。なぜ、日本の自由な展開を許したのか。この試合に臨んだオランダ選手の▽コンディション、▽モチベーション――はどのような状態だったのか。そのことがわからない限り、非論理的試合内容と展開を分析する手立てがない。
◎日本のTV局は真の意味での解説者を用意してほしい
筆者が苦言を呈したいのは、この試合を中継した日本のTV局にである。中継アナ、解説者(コメンテーター)を合わせて4人もの中継スタッフがいながら、オランダ代表選手の事前の情況をまったく視聴者に伝えようとしない。彼らが喋る内容といえば、個々のプレーを追うコメントばかり。最悪なのは、声がでかいばかりで聞き苦しいM氏。「それ!」とか「おう!」とか「ひゃー!」という類の掛け声ばかりで、M氏の「解説」は、素人がスポーツバーで酒を飲みながら興奮して声を上げているのと差異がない。
プレーは映像を見ていれば概ねわかる。視聴者が知りたいのは、自分たちが知らないことだ。たとえば、オランダ代表のそれぞれの選手は、この試合の直前、いつどこでどのような試合をしたのか。ロッベンはバイエルンで何日前にどこと試合をして、どういう状態でこの試合に臨んだのか。後半足がとまったDF陣についても同様である。オランダ代表の各選手は欧州の各リーグでどのような状態にあり、その後、どのような準備をしてこの試合に臨んだのか――そのことがわからなければ、遠征してきたとはいえ合宿をはった日本代表のほうが、コンディションがいい可能性もある。
事前合宿をして周到に準備をしたうえで試合に臨んだ日本代表と、なんの準備もしないで欧州リーグのそれぞれの試合を終えたまま、ベルギーに集合して試合に臨んだオランダ代表との(第三国での)試合だったら、アウエーの洗礼も“へちま”もない。場所がかわった日本ホームではないのか。そのあたりを事前の取材で視聴者に伝えてこそ、解説者ではないのか。試合を観戦して、印象や感想や奇声を発しての応援ならば、どこかのスポーツバーでやってもらいたいものだ。こういう中継を続ける限り、日本のサッカーは強くならない。
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