lucky seventh
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それはカ細く、今にも切れてしまいそうな音がした。
新学期が始まって幾日が過ぎた。 学年も無事に上がって、教室は1つ上の階に移動した。 けど見回した教室内の顔ぶれはあまり変化がなく、 その喧噪の中に身をゆだねる彼の姿はいつもと少しも変わっていなかった。
何も変わっていない。
学校という小さなテリトリーの中、 そう際立った変化は望めない。 少女は目を閉じ、意識を虚空に飛ばした。
何も変わりはしない。
まるで祈るかのように手を胸にあてた。 足下からみるみるうちに風景が変わっていく。 ぼやけた水彩画のような世界。 そこはまるで存在しないかのような不思議な空気を充満させていた。 黄緑色の短い草が雨露に濡れたように艶やかで、 心地のよい風に優しく、それでいてどこか荒々しい風に吹かれた。
「大丈夫?」
後ろから自分の分身である少年が心配そうに少女を見ていた。 少女は静かに大丈夫だよ、と頷いた。
「無理しないで」
ふいに雨粒が窓を叩く音が聞こえた。 それと同時に虚空に飛ばした少女の意識には、 廊下を歩く、人の足音が聞こえた。
あぁ、もう始まる。
それはどちらの声だったのだろう。 ピシッと何かが割れるような音がした。 少年はそれを気にした様子もなく少女に手を伸ばした。
「無理しないで」
少年は少女のほほに自分の手をあてもう一度呟いた。 その瞬間、少女の足下から亀裂がはしった。 それはあまりにも短い再会で、
「「またね」」
二人は同時に寂しくて呟いた。 これは別れでない、始まりなのだ。 少女は引っ張られていく意識の中、心に言い聞かせた。
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン
予鈴の音と同時に少女は目を開いた。 そして、始まりの鐘に静かに耳をすました。
ナナナ
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