lucky seventh
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2004年12月15日(水) 私は『私』いがいの誰かを信じない。

大切な言葉は胸の奥にしまって、
私は私いがいの誰かを信じないと言いました。




















・私は『私』いがいの誰かを信じない。・



















「守るから、」

彼は私の両の手を握りしめて、滅多に見せない真剣な表情(カオ)で言った。

「僕は君を守るから。」

私はそれに微笑んだ。






ゲホゲホ…

ひときわ月が輝く、星がさんさんと煌めいて、
冬特有の空気は、夜の帳につつまれた世界。
少女は1人、明かりもつけず俯いていた。
震える肩は寒さではなく、
辺りには怪我をしたわけではないのに血の香りが漂う。

ゲホゲホゲホ…

ふいに暖炉にボッと火がついた。
あおい、青い炎を光源に部屋がうっすらと明るく、温かくなる。

「ローズン、だいじょうぶぅ?」

暖炉の中から舌ったらずな声が聞こえてきた。
その声に少女は申し訳なさそうに、謝罪した。

「ごめんなさい、ルカシクファー。
 起こしてしまったわね。」

「ううん。いいのぉ。
 だってローズン苦しそぉ。
 アタシ、とっても心配。」

声を発しているのは暖炉の中にいるのはあおい、青い炎。
この部屋の家主と契約を交わした蒼い炎の悪魔 ルカシクファー、
本来なら家主以外の人間のことなど気にする必要はないのに、
青い炎に浮かぶ、ギョロリとした藍の大きな目は
ゆらゆら揺らめいて、暖炉の中から心配そうに少女を見上げていた。

「ありがとう」

少女はうっすらと微笑んで、近くに並べてある薪を一本手にとり、
暖炉の目の前にしゃがみ込んで、ルカシクファーに渡した。
ルカシクファーは薪を受け取り、照れかくしのようにそれをギュッと抱きしめる。
青い炎がボッと一瞬、大きく燃え上がった。
だけど、すぐにその炎は頼りな気に小さくしぼみ、
ルカシクファーは覗き込むように、少女を見上げた。

「ローズン、ローズン。
 アタシ、貴方がとっても心配。」

2回同じ言葉を繰り返すのは、この悪魔の癖。
悪魔はその身体に流れる知識の中に、
ありとあらゆるすべての魔法を記憶し、記録している。
だから、分かったのだろう。

「今の貴方、ボロボロなのぉ。
 呪いの力で、魔法ちゃんと使うことができないのぉ」

少女は悲しそうに笑った。

「お願い。彼には言わないで。」

「どうして?
 ローズン、ローズン。
 このままでは貴方、死んでしまうのぉ」

青い火の粉が、ひらひらと舞う。
元から青白い顔が、それに照らされさらに蒼白になった。

「だから、余計にお願い。
 彼は自分を責めてしまうわ。」

その少女の真剣で、どこか必死さを漂わせる言葉に、
ルカシクファーはただ黙って頷くことしかなかった。

「ありがとう」

少女は心からの礼を述べて、重い身体を引きずるように
与えられた部屋に戻っていった。


「ローズン、ローズン。
 貴方は信じてないのぉ?」

残されたルクシファーは寂しそうに、悲しそうに見届け、
やがて炎はボッと消えた。
ポツリと呟いた言葉は、空気に溶けた。


ナナナ

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