lucky seventh
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2005年01月04日(火) |
ロボットダンス 〜寸劇〜 |
目を開くと、忘れてしまうような それは微睡みの中の、夢…
それでも、それでも、嬉しかったんだ。
「ゼイゼアー…」
ロボットには心がないと誰かが言った。 ほんとうに? 確かにロボットは人の顔をミリ単位でもって見て、 身体にサーチをかけて、表情を作る。 確かに人とは違う。 血のかわりにオイルの回る身体、取り外しのきくパーツ、 明らかに僕らと彼らは違っていて、だけどそれでも僕は思うんだ。
彼らは人なんだと。
「初めまして、シイ… 私の名はゼイゼアーと言います。」
ゼイゼアー あの時、君は起動したばかりだったね。 人とは違う清潔感、部屋からとは違う消毒液の匂い。
「今日から、貴方の話し相手になったんですよ。」
君だけは、僕に話し掛けてきてくれたね。 世界と言う名の毒に侵され、呪いにかかったように眠り続ける 『眠り姫』と、呼ばれた僕に。 昏々と眠り続ける僕、医師たちはでさえ僕が意識を持っているのか そうでないのか分からないような有り様だったのに、 他のロボット達はすぐにあきらめたけれど、 君は根気強く、反応を返さない僕に話し掛けてくれた。 手を握ってくれた。
嬉しかったよ。
「ごきげんよう、シイ。今日はとてもよく晴れていますよ。 気候装置の調子がよいのですかね? いつもより、空が青々としていて美しいですよ。」
「おはようございます、シイ。今日は顔色がいいですね。 久し振りに後で、散歩にでも行きましょうよ。」
何気ない会話、 何気ない日常、 君は僕にそれを与えてくれた。
目覚める可能性は低いと言われた僕を 最後まで守ろうとしたのも、君だけだった。
いつも考えていた。 眠る僕に、君はいつもどんな顔で話し掛けているんだろう?って。 そう考えて、眠る僕の世界に色がついた。
君がどんな風に笑うのか? 君がどんな人なのだろうか? どんな服を着て、どんな瞳の色で、どんな髪型で…
シイ、泣かないで。
君は信じることを知っていたね。 ねぇ、知ってた? それってとても難しいことなんだよ。
シイ、笑って下さいよ。
ねぇ、どうして君はこんなにも僕のことを信じてくれたの? いつだって、最後には誰1人として、僕のことを見放すのに。 ねぇ、どうして君はこんなにも僕のことが分かるんだろうね? 僕ってとても表情が読み取りにくいことで有名なんだよ。 なんていったって眠っているんだからね。
シイ。
でも、泣かないでと君は笑った。 余分なエネルギーを使う余裕もないくせに、 君は微笑みを作り、僕にそう言ったんだ。
聞こえていた。 君はなんて人間らしいだろ。
人だって、子供の頃は大人を真似ていた。 見て、真似て、それがいつしか一人歩きして、 1つの『心』と言うものになっていった。 その人と同じようなものを君は取得したんだ。
「君も人間になったの?」
ううん、違う。 ゼイゼアー、君は人間になったんだね。
目覚めた僕のベットの横で、君はいつも微笑んでいたんだね。 涙で霞んだ視界の中で、僕は初めて君を見た。
ナナナ
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