lucky seventh
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彼女は美しい女性だった。 そして強く、痛いほど真っ直ぐな人でもあった。
「行ってしまったのかね〜?」
空に伸びた光の螺旋 それは天上にも届く階段のようにどこまでどこまでも… 暗雲の中、裂くように突如現れた光は 闇に覆われた世界を割った。 空を見上げて人々は口々に騒ぐ。 世界は終わるのか?と。
「あぁ、アンタは行ってしまったね。」
ただ、それを見つめて1人の女は呟いた。 友の旅立ちを喜び、そしてほんの少し寂しいと思いながら。
「アマデウス」
「何ですか?」
青空の下で、あの日二人は再会した。 それは故意であったのか必然であったのか、はたまた偶然であったのかは 今となってはもう分からない。 高貴なご身分のくせしてこんなとこをほっつき歩いているなんて 普通ならありえないが、性格を考えてみたらありえないとも言い切れない。 ご貴族様としては大問題だけどね〜…。 けれど、だけどもまぁ、 あの時、呼びかけた友に女は答えた。 エステやら、何やら身奇麗に磨かれた身体は染み一つなく 人形のように美しく、選ばれた女のように傲慢なはずの彼女は 良くも悪くも平凡な友の呼びかけに、あっけらかんと答えたのだ。
これが巷でこの国を、ひいては世界を混乱に陥れようとしている女だ何て 笑える。そんなことを思いながら呼びかけた本人は、鼻で笑った。
「何ですか…その悪人笑いは?」
「悪人笑いだんなんて酷いね〜」 アンタ何て悪人。ん?悪女!そのものなのにね〜!!
笑いながら言う友に、アマデウスも笑いで返す。 それでも、その笑い方は彼女が世間で言われるような妖艶で 媚びるような、付け入るようなそんな笑い方ではなく アマデウスの本来持っている、仕方ないと苦笑する すべてを許す笑顔だった。
あぁ、やっぱりアンタはちっとも変わってないんだね〜。
嬉しくて、笑みが深くなる。 そんな友の笑顔に今度は気味が悪い。と、 言うように、アマデウスはそのまま首を傾げた。
「アンタが元気そうで何よりだよ。」
唐突な友の言葉に、アマデウスそのまま動きを止める。 そして、アマデウスが何を言うかと口を開く前に、 片手でストップと制止した。
「あの日、アタシはアンタにこう言ったね。 『世界は神により造られ、神より護られている。 なのに何故、神の世界はこんなにも争いや諍いに満ち満ちているのかね?』 それにアンタはこう言った。 『それは神の試練だからです。 神は、その試練を乗り越えられると私達を信じていらっしゃるから 試練をお与えになるんですよ。』
アタシはあの日、あの瞬間からアンタがその試練を全うできるのか ずっと疑問に思っていた。 別にアンタを甘く見ていたわけじゃない。だが、それ以上にそのアンタの 試練とやらが難読で難問で難解だと思っていたからね〜。 だってそうだろ? アンタに与えられた試練とやらは、 アンタのすべてを費やし、失わせ、そして永遠に遺すものとして アンタを貶め、縛りつけるだろうからね。 アタシはアンタが絶対途中で折れると思った。潰えると思った。 それでもまぁ、結果として、結論として アンタはもうすぐ、それをなしえるとこまで来てしまっただがねからー。」
ただ一言言いたかったんだ。 旅立っていく友に。 見送りの言葉を。 それは真理を見たただ1人の裏も表も見続けた、一人の言葉。
「おめでとう、友よ。 世界中の誰もがアンタを罵り、罵倒しようとも アタシはアンタのことを心から賛辞し、祝福しよう。」
「ありがとう」
そこに正義もなく、悪意はなく ただ、世界の敵として存在した1人の女の余談の話し。 世界の敵のなすがままに ただ、肯定も否定もしなかった友は、友として見守り そして、1人の人として見続けた。 神の世の意思、人の世の意志を。
その目に、女がどう映っていただろう?
善でもなく、悪でもなく それはきっと…… 比類なきもの。なのかもしれない。
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 2006 03/14の余談であり、番外編。
ナナナ
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