まーくん的日常...まーくん

 

 

ヒトデナシ - 2002年05月03日(金)

きょうは、20年以上前のお話。
当時はまだ一般的ではなかった「ねるとんパーティ」みたいなイベントが六本木のディスコで開かれ、そこに行った僕はある女性と知り合った。
京浜東北線沿線の、埼玉県某市に住む、僕よりふたつ若い彼女、仮にZ子としておこう。

Z子はショートカットでやや丸顔、どちらかといえば小柄。
美人でもなければもちろんブスでもないというアイマイなポジションのひとで、別に僕の好みのタイプというわけではなかった。

が、入社一年目、特に恋人らしきものもいなかった僕、まあGFのひとりくらいいてもいいか、もしかしたらそこから別の女性と知り合うきっかけになるかも知れない、という程度の軽い気持ちで、Z子の電話番号を聞いておいた。

会社の職場の先輩、YさんとEさんにそのことを話したら、急に身を乗り出してきた。
Yさんは僕より一年、Eさんは二年先輩で、ともに独身。
ふたりとも、一応、付き合っている恋人はいるらしい。
もちろん、その彼女らとはいわゆる「ステディ」の関係だという(意味、わかりますよね)。

恋人とは、会えば当然ホテルに行く関係なのだが、「最近、(彼女と)マンネリ気味だなー」という発言を彼らからよく聞くようになっていた。
あるいは「なんかちょっと変わったことをしてみたい」とか。
Eさんなぞは「ホテルとかふつうのところでやるのは、あきちゃってね。こないだなんか、飲み屋のトイレでやっちゃたよ」
なんて、品のないことをいう。
その他にも、雑居ビルの屋上付近の階段でやったとか、まるで洋モノAVの見過ぎじゃないの?みたいな行動を繰り返していたらしい。

「●●(僕の名前)、今度彼女とその友だちを呼んで、合コンをやろうぜ」
Eさんが妙にうれしそうな表情で、僕にいう。
「おれも参加させてくれよ」
Yさんも乗り気だ。
「じゃあ、彼女の友だちふたりも呼ばなきゃいけませんね」

ところが、
「いや、ひとりでいいよ」
Eさんはそういって、意味ありげにニヤリと笑い、Yさんに目配せをした。
Yさんも同じような、意味深な笑いを浮かべていた。

一週間後、Z子とその友人N美を、六本木のとあるパブに呼んで、合コンは実施された。
EさんとYさんは、平日だというのになぜか一旦家に帰ったらしく、余りお酒を飲まないYさんが運転するランドクルーザーに乗って、現地にあらわれた。

合コンは、「とりあえずZ子はおまえがちゃんとお相手しろ」とふたりの先輩に言われたこともあって、僕はおもにZ子の話し相手をし、そのふたりとは別個にEさんとYさんがN美と話し込む、というかたちになっていった。

住まいが遠く終電が早いZ子が「今日はそろそろ帰ります」というので、合コンはひとまずお開きとなり、彼女は僕が送っていくことになった。
N美はZ子と住む方向が違って都内だというので、当然、EさんとYさんがランクルで送っていくことになる。

彼らがクルマに乗り込み夜の街へと消えていくのを見届けてから、僕とZ子は地下鉄日比谷線に乗って、上野まで行った。

本当は、途中で「もう少し飲んでいかない? 帰り、タクシー出すから」みたいな展開になってもよかったのかも知れない。あわよくば、ホテルまで行くとか。

が、僕はZ子をモノにしたいという気持ちがまったくなかった。やはり、タイプじゃない、ってことだ。

だから、(もしかしたらむこうも拍子抜けしたかも知れないが)その日は「送り狼」にもならず、ごくごく紳士的に彼女を送っていく結果になってしまった。

上野駅より先は結局行かず、そこでZ子に別れを告げた。
あまり充実感をえることもなく、僕はそのまま山手線に乗って帰宅したのである。

翌日、出社してEさん、Yさんに会うと、
「いやあ、昨日はひさびさに興奮したなあ」
「ほんと、グルグルなんておれ、初めてですよ」
「いやおれも」
などという話で妙に盛り上がっている。
「どうしたんですか」
と聞くと、Eさんが
「やったんだよ、3P。あれからホテルに乗りつけてな」
そういって、笑った。

僕は一瞬、固まってしまった。
そして次の瞬間、
「あんたがたは、なんてことをしてくれたんだ! それでも人間ですか!」
と、思わずふたりに食ってかかっていった。
彼らは、いきなり僕に激怒されて、たじろぎ、あきらかに当惑の表情を浮かべていた。
回りにいた他の先輩たちも、何事があったのかとつめよってきた。

でも、
「このふたりが輪姦(まわし)をしたんですよ」
なんて、大声で言うわけにはいかないので、その場はすぐに矛先を収め、僕は引き下がった。

あとでふたりが、僕にネコなで声でこう言ってきた。
「いやー、さっきのはウソなんだよ。●●がうらやましがるかと思ってちょっとウソをついてみただけなんだって。おれたちマワシなんてやってないって」

しかし、僕はその言葉をすんなりと信用することが出来なかった。
彼らの性格を、よく知っていたから。
あいつらだったら、やりかねない。
やりもしないマワシの自慢なんかするかよ、と。

とはいえ僕は、彼らの「快楽のためなら、コロシ以外のことは何でもやる」みたいな思想、それはそれで否定しない。
誰かを傷つけることさえなければ、何をやったっていいと、僕自身思っているから。
たぶん、N美は合意の上で3Pに参加したんだろう。
レイプでない以上、「犯罪的行為」とはいえない。

でも、僕には「3Pやったよ」という話を聞いて、「そうなんですか」「いやー、うらやましい」という反応を返すことはとても出来なかった。
なぜか。

つぶされて困るほどのメンツが、あったわけでもない。
本気で3Pや輪姦は不道徳だなどという、強固な倫理観があったわけでもない。

つまるところは、そういう蛮行を平気で出来る彼らの、「大胆さ」「タフさ」がどこかねたましかったということかも知れない。

そして、僕は、自分自身に一番腹を立てていたのかも知れない。
先輩ふたりにおもねり、さほど会いたくもない女性に取り入り、先輩の甘心をうるためにお膳立てをした自分に対して。
実は彼らがN美を輪姦してしまうだろうことを、うすうす予想しながらも、結局先輩のいいなりになってしまった自分に対して。

「うらやましい」という感情をストレートに表現することを出来ない自分ゆえに、相手を倫理的なものさしで責める。
本当はそんなものさし、信じてさえいないのに。
これは、まさに、マスメディア、中でも芸能ジャーナリズムのありかたと酷似している。

いい例が、石田純一サンに対するレポーターたちの舌鋒。
あるいは森本レオさんへの批判。
要するに、「自分にはそれができない」ことを知っているがゆえに、一層、倫理的な批判を加えてしまうのである。
筋違いもはなはだしい。

Yさん、Eさん、今は会社をやめてしまい、ふたりともいない。
とんでもないひとたちではあったが、今となってみれば、彼らを非難した僕も青臭かったなと思う。
そう、僕の発言は「偽善」そのもののマスメディアと、似たりよったりのものだったのだから。



...








 

 

 

 

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