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敵に塩を送る(バカ)(中) - 2002年05月16日(木) さて、パーティでは一番かわいい感じのFさんと偶然即席カップルとなり、上きげんの僕であったが、もちろん、そのパーティでは、即席カップルの相手としか話をしていけないわけではなかった。 別のひととも話をかわして、一番気に入った相手にアタック(死語)するのでもかまわなかった。 しかし、僕としては、会場を見渡した限り、彼女以上にタイプな子がいなかったこともあり、ほかの女性に声をかける気がまったく起きなかった。 もし、仮にこの場で彼女から離れてしまうと(電話番号等は聞いておくにしても)、別の男性が彼女に猛烈な攻撃をかけるかも知れない… などとセコいことを考えていた僕であった。 今から考えると、実になさけない話だが。 ということで、しばらく、Fさんのことをひとりじめしておったのだわ。 ところが、パーティも半ばを過ぎたころ。 バンケット・ルームの隣りにもうひと部屋確保されていた、談話室のようなところの椅子に座って、ふたりはくつろいでいた。 僕は、もう、他の女性はどうでもいいから、Fさんを連れ出して、他の場所でゆっくりと話をしたいなあと思っていた。 ところが、こちらに歩み寄ってくるひとりの男性がいた。 年のころは僕(当時)とほぼ同じく、20代のなかばを過ぎたあたりか。 背丈は僕より少し高く、顔立ちは、メタルフレームの、いわゆるサラリーマン眼鏡をかけていてごく平凡。 不細工でもないが、ハンサムでもない、やや下ぶくれ系。 僕はネイビーブレザーを着ていたが、彼は土曜だというのに、なんの変哲もない、中年男性がよく着ているような、ジミなブルーグレイのスーツ姿。 いかにも、お洒落とかに無縁な雰囲気の男性だ。 一瞬、彼が誰か、思い出した。 彼は、最初の待ち時間のあいだに、さっそくFさんに声をかけて会話を始めていた男性であった。 「おう、やるのう」 と思ってはいたが、その後すぐカップリングが始まり、彼もFさんと離れ離れにならざるをえなかったから、僕は気にもとめていなかったのである。 どうも、このままだと、僕がFさんを手放しそうにない、つまり連絡先を聞き出すこともできそうにないので、じれてやってきたようだった。 彼は、単刀直入に、こういった。 「さしつかえなければ、お連れのかたとお話をさせてもらえませんか?」 もちろん、僕とではない(笑)、Fさんと話がしたいという意味だ。 一瞬、気持ちが動揺した。 いくつかの思念が頭の中をかけめぐった。 「こんな野郎、まともに相手にする必要なんかねえよ。 『後にしてください』とかなんとかいって、この場はごまかして、すぐに彼女と一緒にフケたほうがいいのじゃないかよー。 でないと、あいつとこれからずっと競り合わなきゃなんねーぜ」 と、僕の中の悪魔がささやく。 「そりゃ、まずいだろっての。このパーティは自由に声をかけるのが許されているんだから、それを阻止する資格なんて、キミにはないだろ。 彼女にだって、選択の自由があるしな。」 と、僕の中の天使が反論する。(以上0.5秒) 結局、 「ここで相手をあざむくようなケチくさい真似をしたら、彼女は僕にマイナス点をつけるだろう。 そうしたら、むこうの男性のほうに彼女の気持ちがかたむいてしまうかも知れない。 ここは正々堂々と自由競争するしかない」 そう、思った。 「いいですよ」 僕はこころよく、彼女との会話権を彼に譲った。 ただし、 「後でまた彼女と話がしたいので、それだけよろしく」 と釘を差すのは、忘れずに。 それを聞いた彼は、彼女と長話するのはあきらめてくれたようで、ひとまず彼女に電話番号を聞くなどして、あっさりとその場は引き上げてくれた。 その後僕は、これ以上長居は無用とばかり、まだ終わっていないパーティ会場をあとにして、彼女と喫茶店に行き、いろいろと話をしたのはいうまでもない。 Fさんは僕より2才下。山陰地方にある某県の出身。 大阪にある短大を卒業後、某大手証券会社に就職、現在は都内の支店で事務系OLをやっているという。 住まいは山手線の内側の北東部。アパートにひとり住まいである。 さっそく、来週末の土曜、新宿で映画を観ようという約束をとりつけた。 ここまでは、さきほどのライバルに一歩先行。 しかし、そんなことは大したアドバンテージではない。 ここからが、彼女をめぐっての「ガチンコ勝負」となるのだが、それはまた次回にて。 ...
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