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オトコにもてるオンナ(4) - 2003年03月11日(火) 前回はお水の女性の話になったが、ちょっとそれに関連して。 昔、こういう女性が知り合いにいた。 もともとは会社のOL。 見た目はわりと上品で、しかも大人っぽい感じの美人。 ほっそりとしていて、首の長い優美な容姿の持ち主であった。 名前は、Kさんとしておこう。 入社して最初に配属されたのは、会社の受付。 その会社は現在、派遣会社の女性が受付をやっているが、当時は女性の正社員が受付に座っていたのである。 受付といえば、会社の「顔」。 会社としても出来るだけ、容姿端麗な女性をそこに置こうとするものだが、まさにKさんはその役にふさわしい美人だった。 その後数年、Kさんは受付席に座っていたのだが、社の内外を問わず、男性からのお誘いが毎日のようにあったのはいうまでもない。 そのうち、Kさんも、自分の女性としての魅力を強く自覚するようになる。 「このわたしの容姿なら、どんな大物だって落とせるわ」 そう、自信を持つようになっていった。 「とにかく、フツーのオトコじゃいや、財力も才能も、ひとなみ外れたオトコでなきゃ。 わたしはそんなオトコを、この磨きをかけた容姿で手に入れてみせるわ。」 そう、いつも思っていたのである。 そんな彼女にまたとない「獲物」が言い寄って来た。 極道の世界を書いて一躍ベストセラー作家になった、元ヤクザのYが、受付にいる彼女に目をつけたのだった。 YはKさんを食事に誘い、さっそくその席で 「オレの愛人にならないか」 と持ちかけたのだ。 彼女はもちろん、OK。 何十万かの手当をもらうという条件で、彼女はYの愛人となった。 そのうち、KさんはYにねだって買ってもらった毛皮のコートを着込んで、平気で出社するようになった。 分不相応に華美な服装をした彼女の噂は、またたくまに社内中に広がった。 「Kさんは作家Yの愛人になった」 という噂は、彼女の所属する部の上司の耳にも当然入ってくる。 「そもそも、受付なんて外部の客と接する機会の多いところに、彼女を置いたのがイカン」 ということになり、そのうちKさんは受付の仕事を外され、もっと地味な部署に飛ばされる。 しかし、彼女の派手な振る舞いはいっこうにおさまらなかった。 毛皮のコート、高額の宝石の指輪、ブレスなど、その地味な部署にはいかにもふさわしくない出で立ちで出社、上司たちの眉をしかめさせていた。 そのうちに、彼女は自分から 「今度、会社をやめます」 と言い出した。 そして、そのまま退社。 彼女と比較的懇意にしていたある女性社員からの情報では、Kさんは銀座でホステスになったとかいうことだった。 そして、Y以外にもさまざまなカネとチカラを持つ男性をパトロンとしてつかまえ、彼らに依存して生きていく道を選んだようだった。 彼女なら、さもありなん。 皆、そう思った。 いったん、金まみれの世界で美味しい思いをしてしまった以上、もとの「堅実にコツコツと努力して生きていく」という世界には戻れないだろう、皆、そう思った。 その後、十数年の歳月が流れた。 今では、彼女の消息を、とんと聞かない。 果たして今でも、Yか誰かの愛人をやって、羽振りよく暮らしているのか。 あるいは、すっかり足を洗って、カタギの勤めに戻っているのか。 フツーの男性と結婚、平凡な主婦、そして母親となって、つつましくも幸せに暮らしているのか。 はたまた、バブルの崩壊などによりパトロンをすべて失い、失意と孤独感の余り、自殺してしまっているのか。 一回小人数で一緒に飲んだことがあるくらいで、格別彼女と親しくしていたわけではなかった僕としては、知るよしもない。 たぶん、この中では「平凡でささやかな幸せ」が、彼女にとって一番縁遠い世界だとは思うが。 「モテる」ということを自覚し、おのれの最終兵器として生きていくということは、かくもリスキーであったりする。 ハンパな覚悟では選べない、危険に満ちた選択肢だということだ。 女性の皆さん、「モテたいなあ」などと漫然と考えを抱く前に、この事実をお忘れなきよう。 ...
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