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オトコにもてるオンナ(5) - 2003年03月12日(水) お水と並んで、オトコにもてなきゃハナシにならない商売といえばやはり、「アイドル」だろう。 今回はこのアイドルのお話。 アイドルの人気というものは、実におもしろい。 送り手が「これは絶対当たるだろう」と狙いすまして世に出しても、全く不発の場合もあれば、「こんなのたぶん売れないだろうな」とたかをくくっていたのが意外にバカ売れしてしまう場合もある。 もちろん、狙ったとおりに売れる場合もあるにはあるが、そういうのに限って消えるのも早かったりするから、まことに不思議なものである。 たとえば、「モーニング娘。」が五人組でデビューしたとき、現在のような人気グループに成長するとは、一体誰が想像出来たであろうか。 プロデューサー、つんく♂氏自身だって、実はまったく予想出来なかったはずだ。 単体(ピン)ではとても売れそうにない子を五人束ねただけで、超人気グループとなったのだから、これはマジックのようなものだ。 しかも、マジシャン自身、果たして受け手がその魔術にうまくかかるかどうか、予めわからないというところがおもしろい。 とにかく、やってみるしかないんである。 ところで、アイドルといったって、一皮むけば年頃のフツーの女の子たち。 いくらカワイ子ぶったところで、素顔はワガママで、オキャンで、かしましい娘たちに過ぎない。 その実体を知ったら、ファンなどつかないだろうなと考えたのが、昔のアイドル・プロデューサー。 初期の松田聖子のように、脱兎のごとき「素顔」をあえて隠して、カワイ子ふうの「演技」をさせる(グループなら、無理にでも「仲良し」さんを演じさせる)。 あるいは本当に「天然」系の子を連れてくる。 そのふたつしか道はなかった。 しかしつんく♂氏は、また違う手を使った。 彼女たちの「地」のキャラを生かし、かつ多人数でそれぞれに役目を割り振って、メンバーたちのやりとりそのものでおもしろさを生み出す、という手を取ったのだ。 これは関西出身で、「お笑い」の世界もよく知っており、バンド活動を通して「キャラ立ち」の重要性を熟知していた彼ならではの発想であった。 おおげさに言えば彼は、アイドル・プロデュース法における「コペルニクス的転回」を成し遂げたのであった。 彼の手腕により、モー娘。たちは自分たちの「欠点」を、大きな「魅力」に変えることができた。 背が低い。あるいは高すぎる。決して美人ではない。プロポーションだって十人並み。足も細くない。 性格だって、けっこうキツかったりする。 こういった、一般に「欠点」としか思えないものが、「親しみやすさ」の源になったのである。 つんく♂氏が自著の中で「男は“おかんな女”が好き」と言ったのは、そういうことだと思う。 それは「見てくれ」を優先するあまり、各メンバーのキャラ立ちにほとんど無頓着な、他のアイドル・グループと比較してみれば、よくわかるだろう。 ここにまさに「モー娘。」人気独走の秘密があると思う。 女子校の寄宿舎でくりひろげられているような世界を、包み隠さずに見せる、そういう手法で「モー娘。」は最強のアイドルとなった。 「顔」や「プロポーション」なんてのは、実は本当の決め手にはならない。 やはり、ありのままの「人間性」、これにオトコどもはひかれるんである。 「作りもの」としてのアイドルから、「あるがまま」のアイドルへ。 若者たちの多くにとって芸能界が「雲の上」ではなく、地続きの場所としてとらえられるようになっている今、このパラダイム・シフトが着実に進行しているようである。 ...
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