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セルジュとアルバのように Comme Serge et Alba (4) - 2003年05月20日(火)

最後に、今回のタイトルに登場するふたり、セルジュとアルバについて少し書いておこう。

フランスの覆面作家、デラコルタ(正体はスイス出身の作家、ダニエル・オディエ)が書いたいくつかの小説に登場する主人公が、セルジュ・ゴロディッシュとアルバのカップルだ。

少なくとも二十は年が離れているであろうこのふたりは、恋人のようであり、父娘のようであり、同志のようでもあるという、摩訶不思議な関係。

シリーズ中の代表作「ディーバ」は、ジャン=ジャック・ベネックスにより映画化されたので、ご存知のかたも多いだろう。
映画の中では、セルジュはリシャール・ボーランジェ、アルバは中国系ベトナム人とおぼしきチュイ・アン・リューが演じていたが、小説の中のアルバは、ブロンドの髪を持ったフランス人の少女として描かれている。

映画「ディーバ」では、彼らはこんな感じに描かれている。

セルジュは、一寸ワケあり風の独身中年男。
何を生業としているのか、よくわからない。
ふだんは趣味の手料理に興じ、ジグソーパズルを完成させることに熱中している。

その行動といい、思想といい、実に謎めいている。
が、作品を読んでいるうちに読者は、彼がかつて「暗黒街」とも深くかかわっていた人間であることを、知るようになる。

彼はパリ市内の、ロフト風アパルトマンに住んでいるが、そこにいつからか、アルバという十代の少女がころがりこんでいる。
どことなくネコを思わせるこの娘は、盗癖があり、レコードショップでクラシックのLPを万引きをしては、家でそれを聴くことが趣味だ。
もちろん、仕事らしい仕事などしていないし、学校にも通っているふうでもない。

で、このふたり、いわゆる「同棲」の関係なのかというと、また違う感じだ。
アルバは、同居しているセルジュに断りもなく、ほかの男と付き合ったりもしているようで、実際、ジュールという若い郵便配達夫と、淡い関係になったりする。

セルジュは中年になっても「色恋のことは苦手だ」といっているし、どうもふたりは「友人以上、恋人未満」のビミョーな関係のようである。

この職業不明の、えたいのしれないカップルをひとつの軸、ジュールと彼が憧れる”ディーバ(女神)”こと歌手シンシアのカップルをもうひとつの軸として、物語は進んでいくのだが、この二組とも、年の差カップルであるのが、いかにも象徴的だ。

相手に恋をしていても、そう簡単に手を伸ばして恋の果実を摘み取ることが出来ない、どこかもどかしく、でもそれゆえに、常に新鮮な感覚で相手を恋することが出来る関係。
それが、ふたつのカップルに共通した点だと思う。

同世代カップルには絶対成立しえない、一種不思議な恋愛関係を、作者デラコルタは描きたかったのかもしれない。


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