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営業マニュアルについて考える(三) - 2003年05月26日(月) 前回、六本木の新開店キャバクラで、キャスト(ここでは仮にS子としておこう)に、色恋営業を仕掛けられた僕であったが、こちらもさすがに古ダヌキ(笑)、そうそう簡単に「その手」には乗らなかった。 ほどなく僕らは延長時間に突入したが、だからといって「場内指名」は入れない。 入れると、もう「カモ客」ケッテーイ!という感じだかんね。 あくまでもまだ「今後、あなたを指名するかどうかはまだ決めていないよ」という「保留」のスタンスでのぞむ。 ところがS子はしばらくその席にいて、なかなか次の子にかわってくれない。 しかたなく、彼女のお相手をしていたのだが、そのうち彼女、こういい出す。 「お名刺、くださらない?」 ここで、ホイホイと会社の名刺を差し出すやつは、「キャバ初級者」ケッテーイ!である。 社名がわかると、その会社いかんでは「ここは儲かっているから、ガンガンしぼりとってやれ」なんて感じでアプローチしてくるからね。これって、うざったいだけでしょ? その他、あとあとの問題を考えて、最初から素性を全部は明かさないほうが賢明。 キャストだって、本名とか教えてくれるわけじゃないしね。 お客の貴方だって、偽名を使ったって(使いとおせる自信がある場合に限るけど)、いいんじゃないかと僕は思っている。 「あーごめん、今切らしてるんだ。それに僕、会社の看板しょって飲みに来ているわけじゃないから、社の名刺は出さない主義なんだ」 「そう。じゃあ、メールアドレス教えて」 そこでシブるのもさすがに勿体つけ過ぎなので、S子の用意してくれたカードに、メアド(もちろん、会社のではない。苗字とかもわからないプライベート用のヤツだ)を書いて渡す。 もちろん、なにかを期待して渡すわけではない。 どうせメールが来たところで、「お店に来て」という営業メールに決まってるんだから(笑)。 結婚していることをズバリ伝えたのが効いたのか、S子、その後はあまり露骨な攻撃をしてこなくなったような感じだ。 そのへん、まだまだ上野広小路あたりのフィリピン・パブのホステス嬢たちに比べると、甘い甘い。 彼女たちなんか、 「お客さんの奥さんと、わたし、どっちがキレイ?」 なんて、平気で聞いてくるもんな。 相手に決まった女性がいようがいまいが、選り好みしている場合じゃあない。お客をつかまえるには、遠慮など無用。 実に割り切った「お水哲学」が、かの地の女性にはあるね。 そういう意味で、日本女性は、まだまだハンパという気がする。 その後、別の子がついたが、年のころははたち過ぎ、金髪と、派手めでハジけた感じなのはまあいいとして、やたら高いドリンク(それもワインボトル)をねだるのには、うんざりした。 これ以上いると、とんでもない勘定書が来るなと察知した僕らは、たがいに目配せをし、チェックをスタッフの男性に頼む。 やってきた勘定書にある金額は、なんと6万! さすがにこれには開いた口がふさがらない。 「ぼったくりだよなー」と悪友とともにボヤきつつ、ほうほうのていで退散。 その後、メールはひとりからはやってきた。 最初についた、食事おねだりの彼女のほうからだ。 中身はもちろん、「おごってくださいね」という主旨。 あまりの「ひねり」のなさに、思わず笑ってしまった。 だが、二番目の色恋営業の子からは、不思議と何も言ってこない。 やっぱ、正直に「既婚」といったのが、効き過ぎたか(笑)。 いやいや、こうかもしれない。 メールなんてものは、先に出してしまったほうが、「負け」。 恋愛においては、相手に気に入られたい、というサインを先に出してしまったが最後、相手に主導権を渡すことになってしまうのだ。 「私はあなたを好き」とカミングアウトしてしまっても、相手が自分のことを好きであるかどうかは、わからない。 相手が告白しても、決して本心を出さず、内心「しめしめ」と相手に気があるようなふりをする、これはコケットやドンファンの常套手段だろう。 そういう、恋の「力関係」の法則を知っていれば、「来て来て」メールを出すのなど、あまり効果的でないのは明白。 すぐにメールが来るんじゃないかと、タカをくくっていたら、なかなか来ないのでちょっと気になり、ついついその真意を確かめたくてお店に行ってしまった、という方が、キャスト的、お店的には「おいしい」のは間違いない。 色恋営業の彼女は、そのへんも全部見越して、あえてメールを出してこないという「深謀遠慮」のひとなのかも知れない。 うーん、まるで「兵法」のようで、奥が深い。 ということで、以上の三人のキャストを採点するなら、一・三番目の子の営業スタイルは問題外。 「おねだり」は、相手が自分にハマっているということに確信をもってからやるべきことであって、初見でそれをやるのは、逆に相手の心証を悪くするだけなのだ。 結局、彼女たちは「営業マニュアル」を表面だけ読んで、そのままなぞっているタイプといえる。 二番目の子のスタイルは、それよりは大分「慣れて」いる感じ。及第点はあげられる。 まずは「密着営業」という「つかみ」でお客を引き寄せ、あえて営業をかけてこないという「心理戦」で、お客を撹乱し、あとはお客が自然に通い出せばOKという、見事な戦略家なんである。 彼女だけは「営業マニュアル」を自分流に「消化」して実行しているという気がする。 でも惜しむらくはS子、僕にとってはドンピシャのタイプではなかったのだよ。嗚呼。 もしあれで、僕好みのルックスの子だったら、いまごろ、毎日通ってしまっていたかも(笑)。 (この項・了) ...
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