日記帳




2009年08月02日(日) 誰かの香り

抽斗の片付けをしていたら、華奢な小瓶に入った香水が出てきました。
多分、もう何年も前にもらったもので、普段「香りを纏う」というお洒落に縁のない私は、有難くいただきつつも結局は使わない(使えない)まま、大事にしまい込んでいたのでした。
数年ぶりに蓋を開けてみれば、甘やかすぎない爽やかな香りで、これならばさほど違和感なく身に付けられるかも、あの頃より(多少は)大人になったことだし、とほんの一滴ずつ、そろりそろりと使っています。

……が、なにせ香水に馴染みがないもので、自分の周囲から鼻慣れない(などという言葉はありませんが)香りが漂ってくると、どうも落ち着かないような、見知らぬ誰かが自分と二重写しになっているような、奇妙な感覚を味わうことがままあります。やはり私にはまだ香水は早かったか、と思うと同時に、これはむかし数行だけ書き殴ったまま放り出している話に使えないだろうか、とぼんやり思っていたりもします。確か、鏡に映る左手の薬指に指輪をはめた自分の姿に嫉妬心を抱く女性の話だった、と記憶しています。しかし、一部分だけ書き出すと薄気味の悪い……。

香水といえば、パトリック・ジュースキントの『香水』は、覚悟していたほどグロテスクではありませんでしたが「匂い」というものを中心に据えた物語は(「食欲」のそれと同じく)生々しいものだなあということと、解説で触れられていた稲垣足穂の短編は一度読んでみたい気がするということ、吉野朔美さんのエッセイを読んで以来気にかかっていたこの本をようやく読了できて満足であるということ、をここにメモ(読書録の更新がままならないので)。





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ほたる