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12番と15番。 | 2004年12月29日(水) |
"愚者"を何とか追い払い、顔見知りの憲兵から見舞にと贈られた菓子折を頬張っていると、いきなり玄関の扉が居間に突っ込んできた。 「……」 どォんと大きな音を立てて壁に激突したそれは、割れたまま直していない窓ガラスを突き抜けて庭に倒れた。 「……今度は何処ぞの過激派が爆弾でも仕掛けたのか……?」 既に大抵のことでは驚かなくなっている"吊るされた男"だが、さすがに家の中が吹き抜け状態になったことには怒りを感じているらしく、眉間に激しい皺が寄っている。 そんな彼の神経を逆撫でするかのように明るい声がどたどたという足音とともにやってきた。 「よーッす首吊り、生きてるかァ?」 「帰れ」 「相ッ変わらず満身創痍で"悪魔"の俺としてはいたぶりがいがあるってもんだ」 にやにやと嗤う犬耳の男は、彼の鳩尾の刺し傷の部分を正確に狙って強く叩いた。 「……ッ」 思わずうずくまる彼を見下ろして、男は首を傾げた。 「もしかしてまだ傷塞がってない?」 予想以上の痛がりように驚いたらしい。恨みがましい目つきで"吊るされた男"は"悪魔"を睨んだ。 「当たり前だこのボケッ! 帰れ!」 「ヤダ」 「"月"に構ってもらえなかったからと言って八つ当たりはやめろ。どうせするなら他のところへ行――ッた……!」 言い募る彼の後頭部に見事な手刀を食らわせ、"悪魔"は「ウルサイ」と吐き捨てた。 どうやら図星だったらしい。 「……何で俺なんだ……」 「俺がサドでお前がマゾだから。俺からしてみれば相性抜群」 「お前がサドなことは否定しないが断じて俺はマゾじゃない!」 「災難引き寄せ体質のくせに」 「好きでそんな体質なわけじゃない! この犬耳!」 罵倒かどうか微妙な罵り言葉だが、"悪魔"はむすっとした顔つきで黙り込んだ。 「……」 「……」 「……」 「……」 場を支配する沈黙を先に破ったのは"吊るされた男"の方だった。 「……相打ちということでもうこのことに触れるのはよそう」 「……了解」 互いに痛いところを突かれた彼らはそのことを抹消するという妥協案で和解した。 ****** 吊るされた男と悪魔。 何か12番に世話焼き属性がついてしまっているようです。あれ? 現実逃避しまくりのここ数日。行方不明の自制心カムバックプリーズ。 |