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閑話。 | 2005年02月03日(木) |
「縁というものは、いつだってどこかで誰かに繋がっている。悲しむことはないんだよ」 その優しい手は、優しいからこその残酷さを持って私の心を慰める。 「どこかで必ず巡り合える。それは早いかもしれないし遅いかもしれない。命の終わる間際まで出会えない人もいる。でも、出会えないことはないんだよ」 細い糸を手繰るように、必死に繋ぐものは希望。 それは必ず叶えられると、誰が断言出来るのだろう。 「ただ問題なのは、出会ったことに気付かないひともいるということだ。そうやって頑なになっていないで出ておいで」 糸の先にあるものが、自分の望むものでなかったらどうするの。 問いは言葉になることはなく、ただ己のうちに降り積もる雪となって心を凍らせ押し潰す。 声は私の思考を読んだかのように続きを紡ぐ。 「出会いたいひとには必ず出会えるよ。そう私が保証しよう。それでも駄目かい?」 「……。それは、あなたが出会わせてくれるということなの?」 顔を上げた私に、相手は酷く嬉しそうに顔を綻ばせた。 どうしてこれくらいのことでこのひとはこんなにも喜ぶのだろう。 「そうかもしれないしそうではないかもしれない。君とそのひととの縁を繋ぐ役割を担っているのが私かどうか、それは私には分からないからね。でも出会えるよ」 だから安心するといい。 眩く感じる笑顔を見ていられなくて、私はそうと目を伏せた。 その動きを追うようにその手が私の髪を撫でる。 「……別に、これから出会わなくていいのに」 吐息だけで呟いた言葉は相手には届かなかったようだ。別に構わない。 ――既に出会っているのなら良いのにと、未来ではなく過去に思いを馳せて、私は静かに目を閉じた。 ****** 微妙なすれ違いくい違い。 |