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ふたつの世界。 | 2005年02月14日(月)
それは神代の話。
誰も覚えていないような、古い古い話だ。

――古の神の世、世界はふたつに分かたれていた。
それぞれを別の神が治め、隣り合う世界は互いに影響を与え合うこともなく、つかず離れず互いを維持していた。

それが狂ったのは一体何が原因だったのか、知るものは誰もいない。
ある日突然、ふたつの世界が変調を来たした。
それを切欠に神々は諍いを始め、世界の管理どころではなくなった。
彼らが、世界を隔てる膜が融け始めたことに気付いたときにはもう遅かった。
癒着し始めた世界を引き離そうとあれこれと試みたが逆に事態を悪化させるばかり。
同じ『世界』と称されるものといえどもその性質は全く異なるもので、そうしたものが混ざりあうとき、そこには恐ろしいほどの歪みが生じる。
それをただすことで手一杯になったふたりの神々は、成り行きを見守ることしか出来なかった。
全てを無に帰すには強すぎて捨て切れなかった愛着と後悔を抱えて、彼らは世界がひとつになるのをただじっと見つめたのだ。

そしてその最後の瞬間、最も巨大な歪みと熱量が発生した。
嵐が過ぎ去ったあと、残ったのはかろうじて調和を保った美しいひとつの『世界』。

……それから、神々の姿は世界から消え失せたのだ。

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伝承歌の創世神話。どうにもこういう「ふたつの世界」設定が好きなようです。
written by MitukiHome
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