* |
Index|Past|New |
どこからか抜粋。 | 2005年10月25日(火) |
「ロルカは竜の王の巣と、長老たちは言っているが」 青年は目を眇めて砂埃の向こう、竜と共に生きる術を知らぬ者たちの住まう都を眺めた。 隣に従う少年が不思議そうな顔つきで彼を見上げた。 「違うんですか? 僕はずっとそう聞いていましたが」 ロルカは竜の王の巣。 そのうちに棲まう人間に出来ることはたかが知れている。己を世界の王と驕ることなかれ。 連綿と受け継がれる口承のひとつを口ずさみ、「別に違うと言っているわけではない」と彼は無愛想な答えを返した。 「ただ、竜の王の巣と言うよりは女神の掌のようだと思っただけだ」 「女神の掌?」 「サティヤの柔らかくしなやかな掌のように。恵みと試練に満ちていると思わないか?」 くつくつと上機嫌に喉を鳴らし、彼は手綱を繰って踵を返す。 「此の世は結局、女性が支配するものだ」 「何ですかその実感と哀愁の物凄くこもった声は」 慌ててそのあとを追いながら、少年は呆れと疑問の入り混じった調子で呟く。 「お前にひとつだけ処世訓を与えておいてやろう。女は怒らせるな」 「……何かしたんですか」 じとりと睨まれ、男は苦笑気味に首を振った。 「いや、ただ見ていてそう思っただけだ。世界を真に動かし変えることが出来るのは彼女たちだとつくづく感じる」 「……よく分かんないんですけど、つまりオーディさんの周りの女の方たちは皆ご気性が激しいってことですか」 彼は薄く笑った。その頬骨のあたりにうっすらと隈が出来ていることに気付いて、少年は何があったかは分からないまでも、この年上の男に同情した。 「……そこまで分かっているのなら少し黙っていろ」 「……はーい」 ****** 「さいごの夢が眠るまで」ネタ。最近この話ばかりぐねぐね練っています。歯が痛い(唐突すぎ)。 ロルカ=世界。サティヤ=女神。サティヤはあと人名でもあります。 女の子ばかり活躍するお話です。男性陣は殆どがへたれているか間抜けか尻に敷かれっぱなしかのどれかに分類されます。いいのかヒーロー。 しかしこの話、トルコなのかヨーロッパなのかアジアなのかよく分からない世界に育ちつつあります。どうしよう。 |