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No-Mark Stall *




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隔てられるふたりに7つのお題 / 1.逢いたい | 2006年05月10日(水)
言葉にするのも苦しいほど。

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荒野に無機質な月の光が降り注ぐ。
たき火の跡を拾った枝で手遊びにかき混ぜつつ、コーネリアは小さく溜息をついた。
ひとりで過ごすことは慣れていたはずなのに、どうしてこうも心細い気分になるのか。赤茶けたこの大地もよく見知ったものであるはずなのに、やはりどこか遠いものに思えて、彼女はこみあがる不安を押し留めるように静かに唇を引き結んだ。
唯一の道連れである小竜に身を寄せると、きゅぃ、と細く高い、慰めるような鳴き声が返ってきた。硬くひんやりとした鱗の感触が身体に溜まった疲労を吸い取ってくれるようで、コーネリアはゆっくりと肩の力を抜いていく。

けれど幾ら気分が落ち着いても、焦りにも似た寂しさは消えず。
伸ばせばすぐに届いていた手はもう何処にも届かない。
どうしようもなく哀しくて、涙をこぼすことも出来ずにただ身を縮こめて夜を過ごす。

その身を満たすたったひとつの望みがどうか叶えられるようにと、縋るように祈る彼女のまぶたを、そっと睡魔が閉じさせた。

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ふと、彼女に呼ばれた気がして後ろを振り返る。

ただ夜風が通り過ぎるだけの無人の廊下をしばらくじっと見つめて、彼はふうと息をついた。幻聴を聴くとは、どうやら相当焼きが回っているらしい。
心中で暴れ回っている物騒な感情の数々を何とか宥めて、しっとりと絡みつくような微風を振り払うように大股で歩き始める。

手が覚えている彼女の柔らかな髪や手を思い出す度、その衝動は強くなっていく。
「全く、彼女を泣かせたことがないのが私の自慢だったのに」
一緒に暮らしていた人間がある日突然消えて、心配しない人間はいるまい。
ただでさえ彼女は寂しがりやなのだ、さぞ不安になっているだろうと思うと焦りと怒りで感情の針が振り切れそうだ。

自分を呼ぶ、あの優しくて甘い声が聴きたくてたまらない。
嬉しげに微笑む彼女をもう一度抱きしめられたなら、と幾夜恋うたことだろう。

その望みを叶えるためなら何だってしようと、密やかに誓いを立てる彼の姿を、無言の月が照らしていた。


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唐突にお題に挑戦。
とりあえず書け、と。そういうことで。1週間で消化できればいいなぁと目論見中。

文体とテンションが安定してなくて色々痛々しいのと、ポエマー度が常にも増して高いのは気にしないで下さい。
ていうか後半のおにーさん書いてて何か砂吐きそうになりました。やばいこの話物騒な人間しかいない(ちなみに次に連載予定のお話)(一向に進んでませんがちまちまと書いてます)。私の話に出てくる成立済カップルは大概相手のことしか見えてません。どうしたものかこいつら。


隔てられるふたりに7つのお題 / 1.逢いたい
[ 配布元 : TV ]
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