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No-Mark Stall *




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隔てられるふたりに7つのお題 / 5.あさはかなのぞみ | 2006年05月23日(火)
高い高い壁がある。
深い深い溝がある。

壁なら壊してみせましょう。
溝なら橋をかけてみましょう。

だから私のことを見て下さい。

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「リリィ」

知っていますわ。
名前を優しく呼んでくれるときはいつだって、慰めを欲しがっているということくらい。
ええ、あなたの望む通りに致しましょう。
穏やかに微笑めば、いつもあなたは何だか泣きそうな顔をして膝に頭を載せる、わたくしの可愛い甘えん坊さん。

あなたの髪を梳くのは好き。柔らかくてさらさらしている夜のような綺麗な黒髪。
色の薄いわたくしの金髪と比べて、昼と夜のようね、と楽しげに笑った方もいたことを覚えています。あなたと対に見られたことが嬉しくて、でもあなたはわたくしよりも、そう仰っていた方をじっと見つめていたから。
未だにあの方のことを忘れられないあなたを少しだけ憎く思います。

膝にかかるその感触が少しくすぐったくて笑ったわたくしを、訝しげに見上げる、そんなあなたの蒼い瞳が大好きなのです。
「どうかなさいましたか?」
「……何でもない」
ふてくされたようにそっぽを向いて。
疲れていたのでしょう、すぐに眠ってしまって、まあ。


「……まだ、忘れられませんか」

知っていますわ。今日があの方の月命日ということくらい。
あなたは一途な方だから、初めて恋したあの方を忘れられないのだということくらい、わたくしは了解しています。きっと一生、覚えているのだろうということも。

でも、それでも、ねえ、あなた。

あなたの一番を望むのは愚かなことでしょうか。
他の誰も彼女には成り代われないのだと知っていても、それでもわたくしはあなたが最も愛する女でありたいのです。

愚かな女の呟きなど、耳には入れずにおいて下さい。
あなたは優しい方だから、わたくしの浅薄な望みを聞いてしまったらおそらく悩んでしまうでしょう。わたくしとて、こんな醜い姿などあなたにさらしたくはありません。

「愛していますわ、誰よりも」

だから、ねえ、絶対に幸せにしますから、わたくしのものになって下さいな。
一瞬でも構わないから、わたくしを見て下さい。
あの方はもういないのです。あなたの隣にいるのはわたくしなのです。

ねえ、どうか。

わたくしがあなたの首に手をかけてしまいそうになる前に。
わたくしのことを、わたくしだけを、どうか見て下さいな。


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少々変則的な解釈のような感じがしないでもないですが。
しかし昨日のようなくさい台詞より電波な方が書きやすいというのはちょっと問題な気がします。ていうかこのおねーさん明らかにヤバイ。

そういえば今のところ、2番目以外全部同じ話の登場人物でしたりします。
未だに最終話リテイクを繰り返してるおさんどんの話が終わったら本格的に手をつけようとしてる話ではあるのですが。ていうか本当にいい加減どうにかしたいですアレ。


隔てられるふたりに7つのお題 / 5.あさはかなのぞみ
[ 配布元 : TV ]
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